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ロシア情勢の話をいたします。私はこの戦争が本当に長く続いていきますと、ロシアもかなり苦しくなってくると思います。しかし、現在のところ、国内情勢は均衡を保っていると言っていいと思うのです。今のところウクライナ戦争におけるロシア軍の死者は1,5000人と推計されていて、その3倍くらい負傷していると思われます。1,5000人の死者というのは非常に厳しい数字です。かつてのソ連が痛い目に遭ったアフガニスタン戦争で同じくらい死んでいます。
最近のロシアは普通に徴兵した兵隊が死んでしまわれると評判が悪くなって厭戦気分が国民の間に満ちてくることになるので、ロシアにも民間軍事会社「ワグネル」がありますが、ここを利用しておりお金の問題に帰着してきます。このワグネルでは人材が足りないので囚人まで利用しているという話が出てきています。それこそ凶悪犯か何かで牢屋に入っている人が戦争に行って、ある程度の務めを果たせば無罪にして牢屋から出してやるというような契約でしょう。
戦争映画でもよくありますけど、特攻隊(決死隊)のようなものを編成して、そこに入隊する死刑囚に「このミッションが無事に終われば、死刑の罪を減じて自由の身にしてやるから命懸けでやってみないか」というシーンがありますよね。そういうプロットの戦争映画は確かにありますけど、まさにそんなことをやっているようです。
これはイギリス軍が最近警告しましたが、プーチン大統領の体調が悪いとか、あるいは暗殺される、失脚するということを期待しない方がいいと言っています。可能性は低いということで、それはその通りだと思います。しかし、そういうネタを一番流していたのはイギリス自身です。
ロシアの国内情勢はどうなっているかと言うと、少し前にウォールストリート・ジャーナルに矛盾する2つの記事が出ました。この矛盾する2つの記事が両方とも正しいと私は思っています。それがロシアの国内情勢をよく言い表しているのではないかと思います。これは共に7月5日にウォールストリート・ジャーナル日本語版で出ていますが、タイトルは「ウクライナ戦争は雑音にロシア大都市で関心薄らぐ」とあり、BARは盛況、音楽チケットは完売、飲酒取り締まりに忙しい警察と言っているのです。
ここはパーティーシティと言いますか、モスクワとかサンクトペテルブルグは景気が良くて夜中まで皆飲酒して回っているという話です。もう一つは同じ7月5日の記事ですが「ロシア国民に制裁の痛み」というタイトルで、これは経済制裁を受けているから一般の国民も痛みが伝わってきているという話です。ロシア国民に制裁の痛みに対する特効薬は現金支給と言っているのです。お互いが矛盾するような記事ですが、これをよく読んでみると両方正しいと私は思っています。
初めの「ウクライナ戦争は雑音にロシア大都市で関心薄らぐ」という記事で、サブタイトルを再度読みますと「BARは盛況、音楽チケットは完売、飲酒取り締まりに忙しい警察」となっていましたよね。この一説を読んでみますと、ウクライナへの軍事侵攻から5ヶ月経ったが首都モスクワやロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは戦争の気配は、あまり感じられない。一方で多くの命が失われ、住民が家を追われているのも確かだが…ということです。
ロシア最大級の都市にあるBARには溢れんばかりの客で賑わい、映画祭やジャズフェスティバルのチケットは完売、モスクワ市内をパトロールする警察官は確かに突撃銃で武装しているけれども最近は抗議デモの鎮圧よりも公共の場での飲酒に罰金を科すことに追われている。まるで、かつての2018年のサッカーのワールドカップをやった時の夏のようだ。但し外国人の姿が見当たらないということだけは違うという記事です。
もう一つの記事は「ロシア国民に制裁の痛み、特効薬は現金支給」と言っています。確かにインフレが起きていて、この春は16%から17%くらいの消費者物価が上がっています。これは非常に厳しいでしょう。これに対してプーチン自身も6月の演説で16.7%のインフレ率は高いということを言っていました。更に不足気味のことも出てきていて、原油価格の高騰はロシア国内でも起きています。
ところが、その辺りはプーチンの目配りが良くて、子供のいる家庭、妊婦、公務員、年金受給者に現金を支給しているということです。それから不動産開発業者から航空会社まで様々な企業にウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰による恩恵を受けているところもあります。
このように政府が積極的に支援をしているということです。連邦政府の支出は12%上回り、財政収支は赤字になっているが、エネルギー価格は値上がりして外国に売れているため、ウクライナ戦争の1日の戦費以上のものが今のところ入ってきているという状況です。
特に子供の養育費に対して政府から高い補助金が出ています。そして、ロシア政府は最低賃金を10%引き上げたほか、年金支給額を2度にわたり合計20%近く増額したという、いわゆる現金配りをやっています。ロシアは石油と天然ガスの販売収入が外国に輸出して1日10億ドルくらいに上昇しています。しかし、戦争費用とか社会福祉支出で苦しいことは苦しいということです。だけど庶民が反乱を起こさないように目配りして現金を配っていることが、意外に庶民が大人しくしている理由なのです。
当然戦争に反対している反プーチン派の人たちもいます。その人たちからすると、なぜロシア国民が全員大人しいのだろうと思っているのです。この一般国民は自分たちが生活を楽しめる限り、プーチンを批判しないという態度のようです。つまり自分たちが徴兵制で駆り出され、物資不足、生活苦、政治経済堕落となってきたら、こんな戦争を止めろという反戦のほうに傾くような人たちがいます。今までは特にモスクワとかサンクトベルグで、豊かな消費生活を楽しんで、今の平穏な生活が楽しめる限り、あえてプーチンや戦争を批判しないということです。
逆に言うとプーチンとしては国民の批判を受けないために、国家総動員体制は取れないという考えで、一定の範囲内で今の消耗戦争を戦い抜くということにおいては国民の暗黙の支持を得ることができているわけです。これはプーチンという独裁的な指導者と国民の間の奇妙な取引と言いますかディールが行われているという状況みたいです。
先ほどの一見矛盾するような2つの記事は、ロシア国民に制裁の痛みというのと、一方でBARは流行、コンサートチケットも完売、ロシアの大都市ではウクライナ戦争は雑音になっているという話は両方とも正しいと言っていいでしょう。この辺りにはロシアの国内情勢があるということです。こういう現況の中でなんとかウクライナを徐々に追い詰めてきているということです。
先ほどのドイツの将軍のように無尽蔵とは言いませんけど、ウクライナの人口4000万人に比べればロシアの人口は大体3倍くらいです。当然国力もありますが、ある意味で今まであったロシア陸軍神話みたいなものは今回破壊されたと私は思います。そんな圧倒的に強くなかったと感じます。しかし、ウクライナのような小さな国をいじめることはできるわけですから、だんだんスタミナの差が出てきています。
その時に一番応援しているイギリス、次に応援しているアメリカにガタがきているということです。それから...
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一般国民を上手に操るプーチン大統領…
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