00:00 OP
02:21 精神科の病気の発症
05:49 不幸や不運
09:08 レジリエンス
本日は、雑談をしようと思います。
雑談のテーマは「医療は社会学的な問題を扱うのか?」です。
なぜ「医学」としていないかというと、僕がそんなに勉強していないからです。
ただの臨床家なので、臨床的な勉強はしていますが、学問としての医学、歴史、人文系的なものも学んでいないので「医療」とさせていただきました。
「社会学的な問題」と言いますが、広い意味での社会的な問題という風に考えてください。
社会学的な問題といっても、そんなに社会学のことも勉強していないので、的な問題、ということです。
精神科というのは面白い学問といえば面白い、学問というか面白い。
それはfunnyではなくinterestingという意味です。
本当に毎日勉強になります。
患者さんと喋っていると、自分の無知さ加減に腹立たしく思うこともあれば、一緒になって考える中ですごく勉強できるし、色々なことを考えさせてもらえるし、自分の人生を何度も何度も色々な形で体験させてもらえているというか、他人の人生を体験させてもらえているというか。
でも結局は自分のことを考えているんですよね。
相手のことを考えているように見せて自分のことを考えていて、だけど自分の心の延長線上に他人があるというのが、精神医学の面白さでもあります。
でもそうなってしまうと良くないので、他人の立場に立たなきゃいけない。
そういう面白さがあります。
■精神科の病気の発症
単純に言うと、精神科の病気というのは、健康から病気になるときに「遺伝子」+「環境ストレス」、この2つの要素が組み合わさることで発症すると考えられています。
すごく単純化するとです。
もちろん、それだけで説明がつかないものもあるのですが、一応そういうことになっていて、遺伝子の割合が大きいものもあれば、どちらかというと環境ストレスの影響が大きい病気もあったりする。
この配分は一対一ではなくて、圧倒的に環境ストレスが多い場合もあれば、遺伝子の方が多いのではないかという場合もあります。
と言うことは、病気と健康の間は実は「環境ストレスがかなり溜まっている状態」ということです。
間に不幸とか不運と呼ばれる状態があるということなんですね。
だから、病気になるギリギリ前というのは、環境ストレスがものすごく高い状態ということです。
これは何かというと、不幸や不運ということですよね。
その不幸や不運とは何かと言うと、長時間働かされる、貧困の問題などいろいろあると思います。
その問題というのは何かというと、たぶん社会学的な問題、ということですね。
社会が生むストレス。社会というか、人間の集団ですね。
集団であること、組織であること、社会であることが誰かを苦しめて、その結果、スケープゴート的に苦しむことになって、健康のゾーンからだんだん不幸・不運の側に来て、病気に行ってしまう、ということです。
医療なので僕らは病気のところを治す、ということはします。
でも良くなるかというとですね、不幸・不運に来た人が病気になって、不幸・不運に戻るだけなんですよね。
例えば、適応障害というのは長時間働かされているといったことです。
休むことによって不幸・不運に行くことはできる。
でも会社の問題は医療の問題ではない。組織の問題であったり、環境調整の問題だったりする。あとは福祉的な問題だったりする、ということです。
あとは、アルコール依存症、ギャンブル依存症、摂食障害とか何でもそうですが、病気になったときにアルコールの依存の問題がなくなって、摂食障害がなくなったとしても、やはり不幸・不運の問題が残ります。
どうしてアルコール依存症になったのか、という問題が戻ってくると。
でもそれは考え方を直すとか、それだけで解決するものではないことはたくさんあるということです。
考え方の癖で自分が飲みすぎているのであれば医療の問題なのですが、そうではなくて、背景に貧困の問題や孤独の問題があった場合、それは考え方を直すことで健康に行けるのかというと、そうではないことはたくさんあるというのは当たり前ですよね。
だから社会学的な問題は含まれるのですが、扱えるかどうかというのはどうなんでしょう、ということです。
■不幸や不運
不幸や不運というのはどんなものがあるのかということを、思いつく限り書きました。
例えば貧困の問題です。
貧困の問題というのは個人の努力の問題と思われがちですがそうではなく、やはり経済システムの問題なので、個人の努力だけではありません。それは確実に言えます。
優秀な人だからたくさん稼げるわけでもないし、サボっている人でも稼げたりします。
真面目だから稼げるというわけでもないし、長時間働いたから稼げるというわけでもないことは明らかです。
人類というのは、基本的には食料は余っているので、実は飢餓の問題は克服しつつあります。でも貧困がまだあるということはどういうことなのかということです。
日本だと派遣の問題ですね。中間搾取があるから貧しいという問題とか、共働きというのも二人働かないと生活できないということですから、これもある種の貧困の問題であります。
個人の自由だとかそういう風に見せかけることもできますが、一つの貧困のあらわれだったりします。
シングルマザーの問題も貧困とよく絡んでしまいます。
シングルマザーだから貧困になるということではないのですが、相関関係があるという意味です。
そしてヤングケアラーの問題です。
家族の中に病気の人がいると、子どもがケアをしなければいけない。
大人は共働きしたり、働いているから子どもが家族のケアをする。
そうすると、自分の勉強をするとか、自分のために時間を割けないので、次の貧困を生むということになってしまいます。
あとは孤独の問題です。
社会からコミュニティの機能、共同体的な機能が失われた結果、独身の人が増えているというのはあります。
それから虐待の問題です。
孤独と虐待は結構近いです。
虐待の経験があったから孤独を選んでいる人もいるし、貧困があったから虐待を生んでたりもするとか、いろいろ繋がっています。
これもサポート体制があったら虐待が起きなかったかもしれない。
あとは発達障害的な問題、教育格差の問題。
そしてドラッグの問題。
ドラッグ、ギャンブルというのも本来規制できるものです。
国が規制すれば良いものを解禁してしまう、アルコールもそうですよね。
必要悪だから仕方がないんじゃないかと言うかもしれませんが、人類を惑わすものというのがあるわけです。
そういうものが身近にあると、そこに依存してしまって、どんどん抜けられなくなってしまうということもあります。
これらの問題はやはり不幸とか不運と呼ばれるものであるし、社会学的な問題なのかなと思います。
治療して良くなってくると、やはり不幸・不運の問題に到達するんですよね。
ではここから先はどうやったら彼らは病気に戻らずに健康側に行けるのかというと、本当に悩ましいなと思いますね。
■レジリエンス
もちろん、不幸・不運なところからでも成功していく、幸せになっていく人はたくさんいます。
貧困からでも、極端なことを言ったら、スラム街からボクシングのチャンピオンになりましたとか、反骨心があって、負けず嫌いでスーパースターになったけれどドラッグに溺れてしまったという人もいるし、ドラッグからも復活して幸せをつかんだという人もいると思いますが、それはすべての人ではありません。
相対的に貧困でも中流階級に上ったという人もいるだろうし、だけどやはりそれは個人差があります。
どういう個人差なのかというと、創造力ですね。
自分にとって都合の良い物語を作れるかという創造力の問題だったり、回復力、負けん気と言われるような感じ。
あとは復活していくところ。レジリエンスと呼ばれるようなものもやはりあるかなと思います。
ストレスがあってぐっと落ち込むのですが、今度は強くなるというタイプもいます。
サイヤ人みたいなものですよ。死にかけるんだけど、復活したときには元よりも強くなっている。
そういうタイプもいるし、死にかけるともうこのまま弱ってしまう、回復するけど元のパワーほどは戻らないタイプもいたりする。
ここら辺は個人差で、やる気の問題というわけでもなかったりするかなと思います。
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早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4
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