00:31 うつ病エピソード
03:11 知識/経験が乏しい
06:16 社会的な立場が弱い
08:21 安心・保護が必要
本日は「若い人はなぜ苦しいのか?」というテーマでお話しします。
科学的な根拠のある話というよりは、僕の臨床的な雑感を喋ってみようと思います。
■うつ病エピソード
「うつ病エピソード」と呼ばれるものがあります。
調子が悪いとかそういうものです。
落ち込んでいる、食欲低下、集中力がない、不安、焦る気持ち、よく寝られない、そういうものを満たすことを「うつ病エピソード(抑うつエピソード)」と言います。
これらを満たすのは若者や女性に多かったりします。
若者や女性に多いというのはどうしてなのかというと、それを脳科学として見たときに、若い人にはこういう脳の特性があるからだとか、女性にはこういう脳の特性があるからだということはわかっていません。
ではどうしてなのかと考えてみると、社会的な文脈によって違う可能性があります。
もちろん今はまだわかっていないけれど、将来的に見つかる脳の特性もあるかもしれません。
ですが、臨床的な雑感としてということなので、どうして若い人は苦しいのかというと、これから述べる社会的な背景があるからなのではないかと思います。
社会的な背景とは、知識や経験が乏しい、社会的な立場が弱いという特徴ですね。
では若い人とそうでない人で治療は違うのかと言うと、一緒と言えば一緒です。
ですが一応、若い人に対しては抗うつ薬は慎重投与しなさいというのがあります。
抗うつ薬の副作用としてイライラする、ソワソワするというのがあります。それが若者に悪い副作用として出てしまい、自殺を促してしまうことがあるのです。
また、若い人は「双極性障害」を発症しているケースが多いです。
うつ病かと思ったけれど、実は双極性障害だったということもあります。
双極性障害の場合、抗うつ薬を飲むことで躁状態になることがあります。
元気になりすぎて、お金をたくさん使い過ぎたり、喧嘩早くなってしまうなど困るのですが、その途中で「うつ」から「躁」になる中間の「躁うつ混合状態」というものがあります。
このときに自殺のリスクが高くなるので危険です。
だから抗うつ薬は慎重に投与しなさいと言われています。
本題に戻ります。
■知識/経験が乏しい
若い人はなぜ苦しいのかというと、こういう社会背景があるからということです。
若い人というのは知識や経験が乏しです。
親御さんや上司の人が一緒に外来へ来ているときにこの話はよくするのですが、一見身体も大きいし、いろいろなことを知っているから、自分と対等だと思いがちなんですよね。
ですが、10年、20年の経験の差があります。全然若い人は知らないのです。知識もなければ経験も乏しい。
治療の中では、それを補う、教育する必要もあります。
ただ、この補うとか教育というのは結構難しく、「価値観の押しつけ」であってはいけません。
それは本当に正しいことなのかというのはあります。
若い人には知らないことだし、経験があるから教えてあげていることなんだけれども、それが価値観の押しつけになってはいけない。
例えば転職した方が良いとか。それは価値観の押しつけだったりもするので、本当にそのまま伝えたら良いのかは常に考えながら伝えければいけません。
また、本当に正解かどうかわかりません。
転職なんかしたら評価が下がるから、一つの会社で働き続けなければいけないんだというのは親御さん世代の正解であって、今の若者の正解かどうかわかりません。
だから不用意に言うことはできません。
当たり前で当たり前ですけど。でもここなんですよね。
じゃあ何も言わなくて良いのか、あなたたちの好きにやりなさいよと言ったら困ってしまいます。
知識や経験が乏しいから補ってあげる、教育してあげる必要はあるけれど、そのさじ加減はとても難しいです。
そういうものを確立すると、自分はどういう人間なのか、どういうことが得意で、どういうことが苦手で、どういう風にやるのが自分の幸福につながるのか、ということがわかってきます。
だから若者は、知識/経験が乏しい状態から自分の確立に移動していくのですが、まだ自分が確立されていないので困っている。
そしてその原因というのは知識や経験が乏しいからです。
それは補ってあげなければいけないのですが、なかなかそのさじ加減は難しいということです。
これは発達障害の人の治療のケースも同じですね。
何か補ってあげなければいけないですし、コミュニケーションを取るときはこういうことをした方が良いということを、ある程度押し付けがましく伝えてあげないとダメなんですね。
発達障害の人はこだわりが強かったりするので、「いやいや、先生はそういうけれども、僕はありがとうって言われた方が逆に迷惑です」と言ったりします。
いやいや、これは言った方が円滑に進むんだよとか、それが普通なんだよと言って、「いやいや、僕は仕事中にそんなことを言われたら、逆に気分悪くなりますけどね」とか言ったり、そういうやり取りがありますが、それは個人のこだわりだったりするので、世間はこうなんだよってことを伝えてあげるというのが、治療上とても大事です。
■社会的な立場が弱い
次の問題としては「社会的な立場」が弱いということです。
女性もそうですよね。
若い人というのはやはり貧困の人が多いです。
大人ほど稼げないし出費も多いです。
遊びにも行きたいし、洋服だって色々着たいですよね。そういうのが重要だったりもします。
結婚とか、子どもが生まれるとお金がかかります。
そういう意味ですごく出費が多かったりします。
職場でのヒエラルキーも低いです。
入ったばかりで下っ端だし、教えてもらわなければいけないのでより立場がないんですよね。
だからすごく苦しい立場にいたりします。
あとは、家族からの影響です。
現在進行形で影響を受けているし、受けやすいです。
親からこうしろと言われたら、それに歯向かうことがなかなか難しいというのはあります。
これは若者の話ですね。女性に関しても同じです。
やはり女性は男性に比べて、お化粧など出費が多かったりもするし、洋服も買わなければいけません。
職場のヒエラルキーもまだまだ男性社会ですから低くなりがちです。
家族の影響も受けやすかったりします。
やっぱり優しいですからね、なんだかんだ言って女の人は。
男の子みたいに「もういいよ、そんなもん絶縁だ!」と外へ出てヘラヘラする人は少ないです。
社会的立場が弱いのですが、若者からどう成長していくかというと、「職業人としての確立」というのがテーマというか、こういうことができるようになってくると、社会的な立場も弱くなくなるというのがあります。
■安心・保護が必要
臨床的な話をすると、やはり「安心・保護」がとても必要です。
若い人たちや女性を治療するときには、彼らはどうやったら安心するのか、どうやったら保護されたような感じになるのか、ということは常に考えながらやっています。
若い人は特に、安心や保護が必要な反面、武器もあります。
武器は何かというと、体力や友人です。
友人を年上の人よりも作りやすいですし、恋人も作りやすい。
場合によっては親が助けてくれる若い人や女性もたくさんいます。
では逆にそれがない人はどうなんだろうということがあります。
若い人だと友人が作りやすいかもしれないけれど、40代、50代になってきたときに、親は頼れないし、恋人や友人も新たに作りにくいですよね。出会いがなかったりして。
そして社会的な立場も弱い。派遣などで弱かったり。
知識や経験を積んでこれなかった人、病気、障害、ひきこもりの問題などで、知識や経験を積めなかった人たちはどうするんだということも問題としてあります。
若い人だからこうだというのもあるのですが、今はもう若くないんだけれども同じようなことで悩んでいる人たちはどういう治療をしたら良いのか、どういうことに悩んでいるのか、どういう風にフォローしてあげたら良いのかというのも常に考えているという感じです。
こうやっていろいろ「若い人ってこうだよな」と考えながら準備して治療に臨むと、円滑に進みます。
その場その場で毎回毎回でこの人はどういう人なんだと考えていると、偏見があったらいけないとか、思い込みがあったらいけないというのとは違って、やはり準備してから治療に臨むということはとても重要だと思います。
こんなことを考えているということでした。
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ライフサイクル、年代別の悩みやすいこと
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早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4
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