00:35 薬に対する誤解
03:30 薬が多いとは?
05:22 なぜ薬は増えるのか
本日は、「薬を減らしたい」という患者さんの意見についてお答えします。
臨床をしていると、薬を減らしたいということを患者さんから言われます。
でもなかなか勇気がいるようです。
薬を減らすと言って良いのかと皆さん思っているようです。
■薬に対する誤解
薬については皆さん誤解があるようです。
精神科へ行くと薬漬けにされるんじゃないか、私は薬を飲んでいるから不調なんじゃないか、とよく言います。
薬を減らしてくれないのは金儲けのため、薬に依存させるためですか、という誤解もあるようです。
そんなことはなく、僕らは減らせるならどんどん減らしていきたいと思っています。
でも必要な薬だったり、再発予防のために飲んでもらったり、薬を減らすと調子が悪くなることもあったりするので、タイミングを見計らっているときもあります。
当たり前ですが、薬漬けにしてやろうというつもりは全くないです。
薬に依存性があるのではないかと皆さん不安を感じていらっしゃいますが、そんなに依存性はありません。
ものによってはちょっとあります。
ベンゾ系の抗不安薬、睡眠薬は依存性があると言われていますが、お酒やタバコに比べるとはるかに弱いです。
本当に依存性があれば精神科のクリニックなんて儲かって儲かって仕方がありません。
そんなことない訳なので、全然そういうことはないです。
「薬を飲んでいるから不調なんじゃないか」と良く聞かれます。
確かに精神科の薬には副作用がありますが、副作用以上の効果があります。
誤解が多いです。
睡眠薬を飲んでいるから寝られないのでしょうか、と聞かれることもありますが、そもそもあなたは寝られないから来院して、薬を飲むようになって寝ることができるようになったんでしょ、ということなんです。
因果関係を忘れてしまい、卵が先か鶏が先かということになってしまう、ということがあります。
人間は、僕もそうですが、調子が悪いときに食べていたものを犯人扱いしたり、調子が良いときに食べたものを持ち上げたりします。
風邪を引いたときにたまたまリンゴを食べて元気になったら、風邪を引いたときにはリンゴを食べたら元気になるのだと思い込んだり、逆に風邪を引く前にたまたまうどんやカレーを食べていると、自分にはうどんやカレーが合ってないんだ、体調が悪いときには食べないようにしよう、と思いがちです。
でも実際は食べ物、栄養療法はほとんど根拠がありません。
なのであまりそこに一喜一憂しないことが大事です。
■薬が多いとは?
そもそも薬が多いとはどれくらいのことを指すのでしょうか。
多剤処方の定義(保険診療のルール)は、
・抗うつ薬:3種類以上
・抗精神病薬:3種類以上
・抗不安薬、睡眠薬:4種類以上
これらは多剤処方ということで減点対象になります。
逆に、抗うつ薬2剤、抗精神病薬2剤、睡眠薬2種類というのは許容範囲です。
では薬は1剤だけを出しているクリニックが良いんですか、というと、1種類だけ出すところはあまりありません。
シンプルな処方はどういうものかというと、マクドナルドのハンバーガーセットをイメージすると分かりやすいと思います。
例えばうつ病であれば、メインに抗うつ薬(ハンバーガーみたいなものです)。トッピングとしてポテトとジュースがあるように、眠れないから睡眠薬、抗うつ薬単剤だと効きが弱いので増強療法としてリチウムを少量入れたり、クレアチンやアリピプラゾールという精神病薬を少量入れたりします。
場合によっては睡眠薬を2剤にする、睡眠薬に頓服で抗不安薬を入れるというやり方をします。
メイン(うつ病なら抗うつ薬、不安障害でも抗うつ薬)を決めてあげて、サブを足すというやり方が良いです。
結果的にそれが3種類になったり4種類になったりしますが、それは決して多い処方ではありません。
メインの「抗うつ薬」が2種類ではなくて3種類以上ある、「抗精神病薬」が3種類以上あるというのを多剤と言います。
■なぜ薬は増えるのか
ではなぜ薬はどんどん増え続けるのでしょうか。
これは治療者だけの問題もあるし、治療者と患者の共謀であることも多いです。
「調子が良くならないんです」と言われて主治医は困って、「じゃあ薬を増やしましょうか」ということになるのです。
しかし「調子が悪い」というのは病的なものや薬の効きが悪いというだけではなく、そもそも患者さんが悩みの本題を話せていないから、という可能性もあります。
トラウマの問題や虐待の問題、今抱えている恋愛の問題、人間関係の問題、家族の問題、友人関係の問題など色々ありますが、その出来事があるから落ち込んでいるのに、これは病気のせいなのですと言って「薬が効いてないのかな?」と増えてしまうことがあります。
本当は、悩みの本題を解決しなければいけません。
しかしそれを話せていないということがよくあります。
なかなかこういうことを話すのは勇気が要るし、疲れます。
だから主治医も本当は恋愛の問題があるんじゃないか、と気付いていても、KYと言われたくない、患者さんがこんなことを話したら次から通えなくなるかも、と思ってタイミングを逃したりします。
ですから、共謀関係です。
患者さんはしゃべりたくない、医師も話しかけたら二人の関係が崩れてしまう、という感じで上手く行かなくて薬だけがズルズル増えてしまうことがあります。
これは良くないです。
勇気を持って互いに歩み寄っていくことが重要です。
恋愛と一緒です。
男性は決断力がない、女性は誘って欲しいけど誘われたくない、「何だそれ?」という感じです。
でもやはり勇気を出して踏み込んでいかなければいけないし、患者さんからリードしてくれというのは男らしくない…女性の先生もいますが、女性の先生の方が男らしいという意見もありますが…でも男らしい女らしいという言葉はダメですね。
今日はパワハラ…というかセクハラが過ぎますね。やめます。
でもこういうことです。
ちゃんと言う、ちゃんと攻めていく。もしかすると患者さんとの関係が崩れるかもしれないけれど、薬を増やすことで逃げるのではなく、きちんと患者さんの心の核に近付いていく、そのために信頼関係を日頃から意識しておく、ということが重要なのではないかと思います。
今回は薬を減らしたい、と言う意見について動画を撮りました。
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「うつ病ですね」となぜ精神科医は簡単に薬を出すのか?
https://youtu.be/6AXKO9eLRbY
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一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4
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