2012年8月26日(日)14:00~19:00開催、『サントリー芸術財団サマーフェスティバル25周年記念 ジョン・ケージ:ミュージサーカス』 http://www.webdice.jp/suntory_musicircus/
ジョン・ケージのミュージサーカスは、すべてのアクションがI Ching つまり易経による方法で占って決めたタイム・テーブル(時間表)にしたがって行われます。個々の出演者たちは偶然によって決められた開始時間と終了時間を守りながら、パフォーマンスを行っていきます。今回の企画では「2012年夏の日本」をテーマに、各出演者が想い描いたパフォーマンスを繰り広げていきますが、易で決めたタイム・テーブルは厳守しなければなりません。
私たちが目にする易占いは、江戸時代に改良された略筮法や中筮法と呼ばれる方式です。しかし、ケージが好んだ偶然性を示す変爻(へんこう)の部分に省略があります。そこで、本筮法と呼ばれる、現在では廃れてしまった本来の方法に立ち戻ってみました。
動画の前半では、この筮法を実演しています。中国の漢・三国時代に成立した易経の古註(日本の江戸中期の刊本)を手元に置いて、宋の朱熹が「筮儀」で示した方法で行いました。香炉、筮竹と筮筒は市販のものを使い、筮竹を置く木格(もっかく)は朱熹が示した形状にあわせて再現しました(武蔵野美術大学助手・星野曜が制作)。なお、動画は筮法のほんの最初だけで、本来は1回が30分以上かかります。
後半はケージが実際に用いた擲銭法(てきせんほう)の実演です。手元の本はRichard Wilhelmによる易経のドイツ語訳を英訳した"The Book of Changes"です。ケージはこの本の初版を用いました。コインを投げる擲銭法は西洋の易経好きに普及したため、新しい方法と思われていますが、じつは由緒ある古い方法です。『儀礼』(ぎらい)に漢の鄭玄(じょうげん)が加えた注釈を、唐の賈公彦(かこうげん)が解説したときに説明されています。本筮法の略式ではありますが、偶然に変爻が出現するという点でケージの関心をひいたのです。
なお、卦の記録には、今回の企画のために作成した用紙を使っています。ケージの手稿にある記号は特殊なので、朱熹の伝えた4つの記号で書いています。
(文:白石美雪)
『ミュージサーカスと易占い』
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