東京都内には多くの製造業の中小企業、いわゆる町工場があります。価格競争などの影響で減少の一途をたどっていますが、東京都・墨田区は、この現状に歯止めをかけ「職人の技」を守ろうとする取り組みを進めています。
墨田区内には金属加工や革製品などの町工場が数多くあります。1970年におよそ9700件あった区内の製造業は、大量生産による価格競争や後継者の問題などで、2012年にはピーク時のおよそ3分の1となる2800件ほどになりました。
区によりますと、町工場は技術力はあるものの売り込む営業力がないために新しい注文を得られず、事業が縮小傾向になっている会社が多くあるといいます。そこで、区はコンサルタント会社と手を組み、営業のノウハウを町工場に教えることで売り上げの拡大を目指す事業を始めました。
墨田区・産業経済課の中山賢治課長は「経営改善計画の作成から営業方法までマンツーマンで実施するのは行政だけでは難しい。ノウハウを持っているコンサルタント会社に協力してもらい進めていく」と話します。また、コンサルタント会社アイランド・ブレインの西山友浩さんは「新規商談の資料の作り方や商談をどう展開していくかを作り、翌日の営業活動で使えるというレベルまで持っていくことを行った」と話します。
墨田区八広にある創業85年の会社・優工社は、大手アパレルの服などに使う金属の塗装を手掛けています。優工社の神尾弘子社長は営業担当の社員がいない上、注文のほぼ全てが既存の客や紹介という状態に危機感を感じていたといいます。この現状を変えるために区の事業に参加し、新規顧客獲得を目指してアポイントの取り方から商談中のセールストークに至るまで「営業のイロハ」を学びました。神尾社長は「アポイントを取るのが一番の要。その取り方を知らなかった。独自のやり方でやっていたら新規の顧客は取れなかった」と振り返ります。
9カ月の研修の結果、神尾社長は2社の新規顧客の獲得に成功しました。これにより、売り上げだけでなく社内の雰囲気にも良い影響を与えたといいます。神尾社長は「勉強したことを幹部に話すことで、かなり積極的になった。初めてのことも昔だったら(社員も)『できません』という感じだったが、いまは積極的に仕事をしてくれる」と話します。
今後は営業担当の社員を採用して育成していくことも視野に入れ、さらなる売り上げ拡大を目指していく方針です。東京の職人たちが持つ「匠の技」を次世代に残すための取り組みが広がっています。
「職人の技」を守る 墨田区の秘策
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