緊急事態宣言の発令は医療現場の逼迫を受けたものでした。
急増する感染者に満床目前の重症者病棟は。
最前線の取材です。
川崎市で重症患者を受け入れている聖マリアンナ医大病院でも、事態は深刻だ。
緊急事態宣言が発表された7日。
15ある重症患者用のベッドが埋まるまで“残り1床”。
神奈川県全体でも、重症者病床はあと8床と、追い込まれていた。
現場を取り仕切る森澤健一郎医師が、「コロナ専用ICU=集中治療室」に入っていく。
●聖マリアンナ医大病院救命救急センター・森澤健一郎医師
「ここから先が完全なレッドゾーンになります。この患者さんは人工呼吸器管理がされています」
ビニールのカーテンで囲い、ダクトで中の気圧を下げた仮設の陰圧室。
そこで患者は人工呼吸器で命をつないでいる。
●森澤医師
Q年末年始に重症患者が急激に増えた?
「本当に、倍々とは言わないですが、凄いスピードでベッドが埋まっていってしまって。今までは良くなるスピードと、入ってくる患者さんのスピードがある程度コントロールがきいたが、物量でおしきられる。そういうフェーズにきている」
年末年始には、患者の死亡が相次いだ。
この患者もその一人。
人工心肺「ECMO」でいったん症状は回復したが、その後、懸命の治療のかいなく亡くなった。
感染防止のため、家族との最期の面会はタブレット越しだった。
「頑張ったね、もういいよ」。
家族はそう、呼びかけた。
コロナとの闘いを1年近く続けてきた今でも、この病気には「分からないことが多い」と、森澤医師は言う。
●森澤医師
「コロナに関して言えば、本当に僕らの全力を尽くしても認識しきれない、拾い上げられない突然の悪化があって、それは多くの場合、救命しきれない。お若い方でもです。助けられたはずなのに、さっきまで(患者と)お話できたのに」
どうすれば少しでも多くの命を救えるのか。
現場は試行錯誤を重ねている。
運ばれてきた患者は、まずCT室に入れる。
「ダイレクトCT」と呼ばれる手法だ。
PCR検査では、結果が出るのに時間がかかるため、肺のCT画像を撮り、コロナへの感染の有無を判定しようというのだ。
現場で生まれた工夫の1つだ。
チームを率いるのは、放射線医の松本純一医師。
救命救急センターで画像診断を続ける“読影”のスペシャリストだ。
●聖マリアンナ医大病院救命救急センター・松本純一医師
「PCRの結果を待っていられないとかいう時に、もし本物の影があったらば、その段階でCTを撮った段階で「この人はコロナありそうですよ」と言えると、その先みんなの患者さんの扱い方がだいぶ違いますので、それを少しでも5分でも10分でも早く(診断)できるのは意味があることなのかなと」
肺に特有の白い影があれば、陽性の可能性が高まる。
さらに、その影の状態から症状の重さも分かるという。
1年近くにわたりコロナ患者のCT画像を診てきたその目が、感染の有無を見極める。
●松本医師
「Aでーす」
スタッフ
「A判定」
「ありがとうございまーす」
判定は「A」。つまり「コロナではない」。
●松本医師
「これだけ(CT画像診断)が絶対に非常に有用なわけではなくて、これと他の検査をあわせることで、精度をどんどん高くしていくことによって、(陽性患者を)少しも漏らさない、とりこぼしたくない。一例もミスしてすり抜けさせたくない」
実際、PCR検査では「陰性」と出たものの、「ダイレクトCT」でコロナと判定し、その後、再検査で感染が確認されたケースもあるという。
●松本医師
「いまちょうどメールが入りまして、とある病院から救急依頼ということで」
松本医師のチームには、全国の200以上の病院から画像診断の緊急依頼が来る。そのすべてに、ボランティアで応じている。
午前1時すぎ。
この日の診断を終えた松本医師。
向かった先は、病院の駐車場に留めた車だった。
松本医師はここで夜も仕事を続けている。
●松本医師
「これは仕事をするのもありますし、寝たり、暮らすというかですね」
機材は自分で組み上げた。
各病院から送られてくるCT画像をいつでも見ることができる。
深夜でも、移動先でも画像が送られてくれば、すぐに診断する。
●松本医師
「これを倒して、フルフラットではないですけど、こういうかたちで」
松本医師は感染拡大以降、ほぼここで寝泊まりしながら画像診断を続けている。
原動力になっているのは、コロナ専用ICUの中で昼夜を問わず患者と向き合う同僚の姿だという。
●松本医師
「壁の向こうガラスの向こうですけど、そういう頑張っている人(医療スタッフ)がいるからだと思うんですね。目の前に患者さんがいて、患者さんのご家族がいてという、前線には自分はいられない立場、グリーンゾーンにいる立場。これもまた負い目を感じる立場ではありますけど。我々はできることは画像しかなかったので、それで何か貢献できることがあれば、とにかくやらせていただきたいと」
その、コロナ専用ICU。
満床まで、残り1床となっていた7日昼、危惧していたことが起きた。
●森澤医師
「ドクターカーが空いていたらそれは・・・」
●スタッフ
「ドクターカーは空いています。迎えにはOKです」
●森澤医師
「それは行こう。病棟のスケジュール感と調整をして早いほうがいいんだったら早く行こう」
森澤医師が、ドクターカーに乗り込む。
市内の別の病院から「入院患者が重症化し、対応できなくなった」と、受け入れ要請が入ったのだ。
これで、重症者病床は、ついに満床になる。
●森澤医師
「あと一個だからといっていまの患者さんに不利益があっちゃあいけないわけですからそれは当然受け入れます。ただ心配なのは次の患者さんですよね。額面上はもう受け入れられないわけですから」
満床を受け、病院では臨時のコロナ病床を作った。
ただ、そこでは重症患者をみることはできない。
設備も医療スタッフも十分ではないからだ。
●森澤医師
「認めたくはないですが、かなり追い込まれていますね。ただここで白旗を上げるわけにはいかないので、また何か工夫をひねり出します。少なくとも目の前にいる人というかこの地域の人達だけは守り抜きたいと思います」
(報道特集 2021年1月9日放送)
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