水深120メートルの海底に沈んだ知床観光船。引き揚げられるはずだった船体は、移動中再び水深182メートルへ落下してしまいました。原因は吊り上げていたベルトが5本中2本切断したことです。振り出しに戻ってしまった作業の今後は?事故原因究明への影響は?
■船底を下にした状態で大きな損傷はなし
5月24日午前11時半すぎ、知床半島沖の海上は濃い霧で覆われていました。観光船「KAZU I」を吊り上げ、えい航中だった作業船も霞んで見えます。
実は、すでにこの頃、KAZU Iは、深い海底に沈んでいたのです。
記者
「本日、作業船の上へと引き揚げられる予定だったKAZU Iの船体ですが、水深およそ180メートルまで落下しました」
23日、KAZU Iは水深120メートルの海底から海面近くまで吊り上げられ、その姿が白く浮かび上がりました。
潜水士が船体の底にナイロン製の帯を通したあと、作業船から下ろされた“吊り天秤”と呼ばれる鉄骨と固定。
船体は、水深20メートル程度の高さまで吊り上げられたあと、浅瀬まで移動し、24日午後にも作業船の上に引き揚げられる予定でした。
海上保安庁によりますとKAZU Iは、24日午前8時、作業船の乗組員が見た時には船につながれていました。しかし、午前10時ごろ再び確認すると、姿が見えなくなっていたということです。
無人潜水機で確認したところ、ウトロ漁港の西約11キロ、水深182メートルの海底に沈んだ船体を発見。船底を下にした状態で大きな損傷はないということです。
■原因はベルトの切断 26日に再び引き揚げへ
えい航中のKAZU Iは
▼作業船から吊り天秤までのワイヤー
▼船体そのものを支えるベルト
▼船体が回転しないように固定する前後のワイヤー
で支えられていました。
海上保安庁によりますと、船体を支えていたベルトは、5本ありましたが、このうち後方の2本が切れていたといいます。
元海上自衛官の水難学会・安倍淳副会長は。
「水中に船をぶらあげたまま水中曳航という方法がとられました。船の振動もさることながら、抵抗のある船が水の中を吊られて進むわけですから、ベルトが船底の鋭利なところに振動であたって、すり切れて破断するということはあるというふうに聞く。そのような現象が起きたのかなと」
作業船は、再び海底から船体を吊り上げる作業に取り組みますが、今度は潜水士による「飽和潜水」を行わず、無人潜水機で作業を進めるということです。
26日には、再び船体を引き揚げ、27日に網走港に入港する予定だとしています。
■船体の落下、今後の捜査への影響は・・・
一方で、今回の船体の落下は、捜査への影響も大きいと海難事件に詳しい弁護士は指摘します。
海難事件に詳しい 中村浩士弁護士
「船長および社長の過失を裏付けるためには、やはり事故原因の特定が一番重要になります。目撃者が全く不在ですし、船体・傷の状況、それからエンジン等の機器の状況、こういったものが最大の重要な証拠になってきますので」
仮に、沈没の主な原因が気象条件や高波による影響だったと判断された場合は、当時注意報がでていた中で出港判断をした桂田社長も、業務上過失致死の疑いに問われる可能性があるといいます。
もし、今回の落下によって船体に新たな傷ができた場合の影響は。
中村浩士弁護士
「(落下前に撮影された船体の)画像がどれだけ鮮明に撮れているかにもよるが、事故当時にあった傷であるということの特定ができなければ、社長の過失を問う事への重大な妨げになる可能性はありうるかなと思う」
また、国土交通省は24日、運航会社「知床遊覧船」の事業許可を取り消す方針を決めました。事故を受けての許可取り消しは、前例がありません。6月14日に知床遊覧船から釈明を聴いた上で、正式に処分が決定します
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事故原因究明への影響は? 吊り上げベルト5本中2本切断で引き揚げられる予定が水深182m海底に落下 知床観光船|TBS NEWS DIG
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