ウクライナからの避難の道中、そして他国に逃れても、子どもたちは人身売買などの危険にさらされています。ウクライナからたった一人で1100キロを逃げてきたという少年を取材しました。
■モルドバへの避難民 約40万人に
国山ハセンキャスター
「ルーマニアの首都ブカレストから車で6時間。陸路でモルドバに入りました」
ウクライナに接する周辺国の中でも経済規模が小さいモルドバ。日本の九州程度の大きさの国ですが、避難してきた人の数は、モルドバの全人口の約7分の1にあたる39万9039人です。(4/5現在 UNHCRまとめ)
国山キャスター
「この建物には「MOLDEXPO」と書かれています。『EXPO』は展示場という意味で、モルドバの展示場ということです。この建物の中にウクライナ避難民の方々がいるということです」
■避難所の運営には14歳の学生ボランティアも
展示場の中はパーティションで仕切られ、隣接する施設と合わせ297人の避難民が生活しているといいます(4/5の取材時点)。共同で使う洗濯機やシャワーブースも設置されています。食事の用意なども含め、避難所の運営の多くは、地元のボランティアによって支えられています。ボランティアの女性に話を聞いてみると、14歳の学生でした。
国山キャスター
「どうして、このボランティアに参加しようと思ったのですか?」
ボランティア
「1~2日ぐらいと思っていたら、もう1か月が過ぎちゃいました。ここの人とも仲良くなって離れられなくなったのです」
■避難してきた母子の願いは
ウクライナ北東部のハルキウから息子と共に避難してきた親子が暮らす場所を見せてもらいました。
国山キャスター
「ベッドが1つありまして、あとは女性の荷物がたくさんあります。リュックが1つとそれぞれ紙袋やビニール袋もあります」
3週間あまり過ごしているといいます。
国山キャスター
「願い事はありますか?」
女性の息子
「戦争が終わってほしいです」
■“人身売買”から女性や子どもを守れ ポスターやチラシで呼びかけ
避難民の多くが女性や子どもです。“人身売買”や“性的搾取”などの危険にさらされています。ポーランドとウクライナの国境付近では、こんな目撃談もありました。
目撃者の男性
「男が女性や10代の少女の写真を撮っているのを見て、“人身売買”がこの背後にあることにすぐに気付きました」
国山キャスターが取材したルーマニアでも、ポスターやチラシを使って人身売買への注意が呼びかけられていました。
ブカレスト市担当者
「このチラシはウクライナ人向けに人身売買に対する意識を高めてもらうためのものです。何かに気づいたらルーマニアの警察に報告をするように書かれています。政府として予防的措置が必要です」
■「僕は男だから泣かない」列車で3日かけ隣国スロバキアへ
危険な状況の中、ウクライナから1100キロの道のりをたった一人で避難し、家族と再会できた少年がいます。ウクライナの隣国スロバキアのアパートに暮らすハサンくん11歳。6人きょうだいの末っ子で甘えん坊です。
ハサン君(11)
「お母さんと離れたことがなかったし、これからも離れたくない」
ハサン君が暮らしていたのは、ウクライナのザポリージャ。ロシア軍の攻撃を受けた原発のある街です。
母親は認知症の祖母を一人残すことができず、ハサン君だけをきょうだいが暮らすスロバキアに避難させました。避難には列車で3日かかったといいます。
ハサン君
「リビウを通った時が一番つらかった。24時間列車の中にいなければいけなかったし、すごく混んでいたから」
避難する長距離列車はどれも混雑し、ストレスから乗客が言い争うこともあります。
乗客の女性
「私の子どもは立っているのよ。座りたいから場所を譲ってください」
それでもハサン君は・・・
ハサン君
「女の人と子どもがきたから席を譲ってあげた」
笑顔で話すハサン君。しかし、きょうだいは列車から電話をかけてきたときの弟の声が忘れられないといいます。
兄・モハメドさん(15)
「ハサンの声が震えていたから泣きそうだと思った」
姉・ルナさん(16)
「『泣きたいの?』と聞いたらハサンは『僕は男だから泣かないよ』って」
■爆撃され意識を失っても・・・手に連絡先を書いた母の思い
避難するとき、母から言われ手に書いたきょうだいの連絡先。消えないように、列車の中で何度もなぞっていたといいます。
そして無事国境にたどり着き、警備隊とボランティアに保護されました。手に書いた連絡先を頼りにきょうだいと再会することができたのです。
ハサン君
「みんな自分のことで精一杯なのに手伝ってくれて本当に感謝していると伝えたいです」
そしてその後、ウクライナに残っていた母親と祖母も避難することができ、家族が再会できたのです。
ハサン君
「とても嬉しくてお母さんを抱きしめてあげて『愛している』と言ってまた抱きしめてあげた」
母・ユリアさん(53)
「皆さん本当に命の恩人です。ハサンの避難を手伝ってくれた人たちに、今まで感じたことがないほど感謝しています」
ユリアさんはハサンくんを一人で避難させるのは苦渋の決断だったといいます。
ユリアさん
「1人で避難させるのはとても怖かったですが、ハサンに生き延びてほしかったんです」
連絡先を手に書かせたことには、別の理由もありました。
ユリアさん
「もし列車が爆撃されてハサンが意識を失っても、誰かがこの番号を見てくれたら連絡してくれるだろうと思ったんです」
記者
「攻撃を受ける恐怖があった?」
ユリアさん
「走っている車が攻撃されているので、列車ももしかしたら攻撃にあうかもしれないと思いました。
これが私が一番怖かったことです」
親子が一緒に暮らせる当たり前の日常を、ウクライナの多くの家族が奪われています。
■エネルギー価格4倍に 隣国モルドバも戦争で圧迫
小川彩佳キャスター:
ウクライナを離れる一人ひとりにこうした困難な道のりや物語がある一方で、交わされる温もりがあるということを痛感します。モルドバの避難所から国山ハセンキャスターに伝えてもらいます。そちらの避難所ではどんな様子が見られますか?
ハセンキャスター:
ここは元々展示場でしたが、今は避難所として使われています。入るとすぐに受付があります。ここに滞在する人というのは長期の人もいますし、本当に1日2日の短期の人もいます。ですから、ここで鉄道やバスなどの交通情報を確認することもできます。飛行機などの手配ができるUNHCRのブースもあります。
そして食事面ですが、お昼は大体午後2時頃、そして夜は午後6時頃に提供されます。果物やパン、温かい飲み物などを皆さん自分で取って部屋に持っていきます。部屋はそれぞれがブースで区切られ、プライバシーが保たれています。
小川キャスター:
多くの方がほっとできる場所になっているということが伝わってきますけれども、一方でモルドバは、ヨーロッパで最も貧しい国でもありますよね。資金的な難しさというのはどうなんでしょうか?
ハセンキャスター:
モルドバはエネルギー面でロシアに大きく頼っています。実際に今回の戦争の影響で、エネルギー価格が4倍に値上がりしました。そうなりますと当然国としても圧迫されますし、国民の生活にも影響が出ます。そこに加えて難民の問題が来たということです。それに付け込むような形で、まるで分断を煽るような形でロシアが偽情報工作を行っているということです。隣国のモルドバが戦争のダメージを受けているということは、間違いありません。
(07日00:02)
【現場取材】“人身売買”の危険にさらされる避難民の子ども達 “たった一人で”避難の11歳少年は今
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