ウクライナは、ゼレンスキー大統領をはじめ、政府関係者もSNSを駆使して世界に情報を発信しています。大統領の妻・オレナ夫人はSNSに公開書簡を投稿、多くのファーストレディが支持しました。軍事力にSNS戦略などの情報戦略を加えた戦いを「ハイブリッド戦争」と呼び、このハイブリッド戦争においては、ウクライナが圧勝していると専門家は指摘します。しかしロシア侵攻の戦況を変化させるまでの力はなく、形勢逆転とはいかないのが現状です。世界がSNS発信を続ける意味を考えてみました。
■大統領夫人のSNSが反響
良原安美キャスター:
ウクライナのオレナ・ゼレンスカ大統領夫人が公開した文書が反響を呼んでいます。
「女性や子どもたちは今シェルターや地下室で暮らしている。高齢者、重病人などを含む多くの人々は衰弱し、何の支援も受けられていない。罪のない人々との戦争は二重の犯罪です」
この内容にはポーランドやラトビア、トルコの大統領夫人などから支援の声がを寄せられています。
さらにオレナ夫人は、これだけではなく、自身のインスタグラムで、ウクライナ人の現在、特に女性や子どもの今を写真をあげて伝えているんです。
例えば、戦地に向かうウクライナ人の女性兵士の様子。迷彩服姿で、ヘルメットと防弾チョッキを身に着けています。そして、難病の小さな子どもが避難していく様子。ストレッチャーの上に寝かされた状態で車に乗せられていく様子が写し出されています。続いて、小さい2人のお子さんがお母さんと一緒に避難していく様子の写真もあります。「あと何人子どもが死ねばいいのか」といったメッセージも一緒に添えられています。
■ウクライナがSNS戦略でロシアを圧倒
このようにSNSで発信を続けているウクライナ人は、オレナ夫人だけではありません。まずはゼレンスキー大統領は連日、自身のインスタグラムなどで発信を続けています。
「私はキエフにいる。隠れていない。何も怖くない」といったことを発信し続けているんです。さらにミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル相やクレバ外相など政府関係者や国民などもSNSで情報を発信し続けています。
こうしたSNSなどの情報戦と軍隊の戦いとを合わせて、いわゆる「ハイブリッド戦争」と呼ぶのだそうです。日本大学危機管理学部の福田充教授は、「ハイブリッド戦争はもともとロシアが得意とした手法だが、今回はウクライナが圧勝している」と話しています。
そしてSNSで拡散が続くことで反ロシアの動きが広がっています。例えば、キエフの防空壕で7歳の少女が周りの人々を勇気づけるために「アナと雪の女王」の主題歌を歌ったシーン。この動画にはツイッター上で「彼女たち全員が無事でありますように」「世界中の人たちがあなたたちを応援しています」といったメッセージが寄せられています。
また、3月8日、イリピンで警察官のお父さんと小さいお子さんが別れるシーン。この動画が拡散されると、ツイッターでは「勇敢な男性が子どもと再会できますように」「心のないプーチンは彼らへの爆撃をやめない。誰か彼を止められないのか」といった声があがっているんです。「ウクライナが世界を味方につける状況になっている」と福田教授は指摘しています。
ホラン千秋キャスター:
戦況をこのようにSNSで発信することによってどのような効果があるんでしょうか。
笹川平和財団 畔蒜泰助 主任研究員:
今回圧倒的にロシアの分が悪いわけですね。正当性は圧倒的にウクライナ側にあるということですので、SNSを積極的に使って、悲惨な状況や女性と子どもを全面的に押し出すことで、少なくとも世界の世論をウクライナ側に引きつける、ウクライナの味方にするという効果は絶大にあると思います。
ただし、じゃあこれで戦況を大きく変えるかというと、そこまではいかないと。あくまでもハイブリッド戦争のベースにあるのは、やはり軍事的な、物理的な戦いであり、情報戦はプラスアルファですので、そこは限界はあると。ただし、今のところ情報戦に関しては非常にうまくやっているということだと思います。
ホランキャスター:
ウクライナがそもそもこういったSNS戦略に強くなったきっかけというのはあるんでしょうか。
畔蒜 主任研究員:
ウクライナは2014年以降、クリミアでロシア側にSNSでだいぶ不利な状況に立たされたということが一つ大きな教訓になってるんじゃないかと思うんですね。あと、もしかしたら、ウクライナ側のSNS戦略の後ろにはアメリカを含め欧米諸国が何らかの形でアドバイスをしている可能性もあると思います。
■ロシア 政府はSNSを規制 国民は反発
良原キャスター:
では、このウクライナによるSNS戦略、ロシアにどんな影響を与えるんでしょうか。
外交・安全保障政策に詳しい明海大学・小谷哲男教授によりますと「ロシアはSNS戦略の重要性を認識している。現在、ロシア国内では主要なSNSが制限または使えない状態になっている」と言います。具体的に使えないSNS(制限含む)はFacebook、Twitter、インスタグラム、TikTokなどです。逆に使えるSNSとしては、テレグラムというものがあるそうです。ただし、これに関してもロシアを批判する内容が増えた場合、規制の対象になる可能性もあるといいます。
ではロシア国民はどのように情報を集めているんでしょうか。福田教授によりますと、「ロシア国内の人たちは限られた情報の中で真偽を判断している。そしてその上でロシア政府への反発を強めている」そうです。3月13日にはロシア国内38都市でデモが起こりました。逮捕・拘束されている人は919人に上っています。さらに2月24日以降を含めますと、約1万5000人が逮捕・拘束されているという現状があるんです。
ホランキャスター:
ロシアとしては、主なSNSのプラットフォームが使えないわけですが、その分をどのように補おうとしているんでしょうか。
畔蒜 主任研究員:
国際的な情報戦ではなかなか勝てませんので、むしろ国内の情報をある程度制限することで国内の統制を強めていると。言ってみたら防戦の状況にあるんだと思います。
日比麻音子キャスター:
SNSは発信するだけではなくて、「いいね」をしたり、遠い場所にいても何かコメントをしたり、ウクライナの皆さんに力をを届ける手段の一つでもあるのかなとも思うんですが、こういったSNS上の情報、我々はどのように受け取っていけばいいとお考えでしょうか。
畔蒜 主任研究員:
まず今回の一連の軍事オペレーションを含めて、どちらに正義があるのかということが非常に一番大きいところですので、ウクライナ側の情報が非常に力を持って我々のところに届いているということは、まさにそこの部分があるんだと思うんですね。ですから、そういう彼らに対して我々もちゃんと「いいね」も含めて答えてあげるということは、やはりこの戦いをサポートする上で非常に重要なのかなと思いますね。
日比キャスター:
そういった世界中からの反応がより停戦に向けた一歩に、力になると信じていいんでしょうか。
畔蒜 主任研究員:
そう願いたいですね。
日比キャスター:
こういったSNSなどの力を通じて一歩でも停戦へ進むこと、それを切に願うばかりです。
(14日19:31)
ウクライナ SNS戦略でロシアを圧倒も戦況に変化なし
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