ウクライナ情勢の悪化がどのような影響を及ぼすのか?サケやサーモン、明太子などの海産物のほか、小麦や銀歯、ジュエリーまで。私たちの生活のあらゆるところで影響を受けそうな今回のウクライナ情勢について経済の専門家に今後の見通しなどを聞きました。
■ウクライナ情勢が明太子やサケにも影響
南波雅俊キャスター:
ウクライナ侵攻は我々の生活にも大きく影響を及ぼしそうな状況です。
<ロシアから日本に輸入している農林水産物トップ5(2020年/財務省貿易統計)>
製材 約20%
カニ 約20%
サケ・マス 約12%
タラの卵 約8%
ウニ 約5%
海外から輸入しているシェアの中でこれだけをロシアに頼っているという状況があるわけです。そして食卓にも影響するのではないか。
まずはサケです。ロシア産のベニザケは通常の輸送ルートが使えず遠回りをすることで輸送費が上がっているため、仕入れ値が既に約3割上がっているということです。(築地 浅田水産 取材)
そして、ノルウェー産のサーモンに関しては、今、ロシアの領空をEUなど様々な国が飛べない状況になっているので遠回りをしているため輸送費が上がっています。築地「斎藤水産」では今ある在庫限りで販売をストップするということです。いずれも取材をした限りでは、販売価格は企業努力もあって変えていないということですが、長引くと値上げをせざるを得ない状況もあるかもしれません。
そしてタラの卵。明太子などに使われますが、福岡の老舗明太子メーカーに取材しますと、原料の約50%がロシア産だということです。担当者は「十分な量のたらこを仕入れているので、当面の間は生産量・品質・価格に変更はない」とのことでした。ただこちらも「長期化すれば原料等調達への不安もある」というふうに話しています。
■ロシアから輸入していない小麦も価格高騰
そして、大きな影響がありそうなのは生活に欠かせない小麦です。パンや麺類、そしてお菓子など様々なものにも使われていますが、小麦の輸出量が世界で最も多いのがロシアなんです。
先物価格(米シカゴ・7日の取引)で、1ブッシェル(約27キロ)あたり一時12ドル94セント。14年ぶりの高値水準となっています。日本に関しては、直接ロシアからの輸入というよりもアメリカやカナダ、あるいはオーストラリアに頼っているのですが、ロシアの輸出が制限されると、世界的な価格も上がっていきますから、その水準にも影響されて日本の輸入価格の高騰に繋がっていく可能性があるというわけです。
ホランキャスター:
これらの中で最も打撃が大きくなりそうな品目というのは何でしょうか?
経済アナリスト 森永康平さん:
やはり小麦は日本自体はロシアから直接輸入しているわけではないんですが、結局ロシアが輸出しているアフリカとか中東の部分がストップしてしまうと結果的に小麦の市況が上がる。そうなると麺類とかパンとかお菓子、いわゆる私たちが普通に食べているもの、これらが全て値上がりしてしまう可能性が非常に高くなってきたということですよね。
ホランキャスター:
小麦や海産物は他の入手先を探すというのも難しい現状なんでしょうか?
森永さん:
代替手段がある場合はいいんですが、例えばベニザケは日本の場合ロシア産がほとんどですから、今は値段が高くなるという状態で収まっていますが、そのうちに値段が高くなるどころか入ってこなくなってしまうということも十分考えられると思います。
井上貴博キャスター:
これまでの値上げのニュースと決定的に違うのは原油高などではなくて、平和、民主主義、国の主権が脅かされている。そうなると、消費者である私自身は我慢しなくてはいけないのかな、というふうに思うんですけど、一方でこれを生業にしている方、卸の方や生産者への支援というのはどう考えてらっしゃいますか。
森永さん:
新型コロナウイルスのときと一緒なんですけれども、企業努力で何とかしろと言ってもどうにもならない部分が大きいですから、やはりそこは国が給付金で補助するといった対応が必要になってくると思いますね。
井上キャスター:
品目でということですかね。
森永さん:
そうですね。
■ジュエリー産業にも「大きな痛手」
南波キャスター:
そして、今もう一つ注目されているのがレアメタルの「パラジウム」という金属です。日本の場合、多くは自動車の排気ガスの削減に使う触媒に使われることが多いんですが、身近なところで言うと「銀歯」などにも使われています。そして、ロシアがこのパラジウムの世界の4割を超える産出量を誇っているということなんです。
パラジウムの先物価格(ニューヨーク商業取引所 7日)は、1トロイオンス(約31グラム)あたり3425ドル(約39万6000円)まで上昇。取引時間中の最高値を10か月ぶりに更新しているという状況です。
パラジウムの高騰はジュエリー業界にも影響がありそうです。金やプラチナにパラジウムを混ぜて加工すると強度が上がるということなんです。例えばプラチナだけですと傷がつきやすくなるのですが、パラジウムを混ぜると傷もつきにくくなるということで非常に重宝されています。
<3月8日の小売価格(1グラムあたり)>
「金」8184円
「プラチナ」4679円
「パラジウム」1万2584円
(日本マテリアルより)
パラジウムはここ1か月で3500円ほど高騰している状況なんです。これに関して、ジュエリー産業が盛んな山梨県の水晶宝飾協同組合の松本一雄理事長は「ジュエリーを作るのにパラジウムは欠かせない。金やプラチナよりも高くなっているので大きな痛手」と話しています。そしてこれだけでは収まりません。“ダブルパンチ”ということで、ダイヤモンドもロシアは有数の産出国です。世界全体の約3割を生産しています。これに関しても「ここ最近ダイヤモンドの価格がコロナの影響もあって2~3割上がっている。今まさにジュエリー業界においてはダブルパンチ状態に陥っている」ということなんです。
ホランキャスター:
ロシアは原油であったり鉱物・金属、天然資源の多い国ですので、そこに頼ってる国々というのはかなりの痛手があるということですね。
森永さん:
今回の一件を我々日本はどう考えなくてはいけないかというと、資源であったり食料、エネルギーもそうですけれども、なるべく外に頼らない新しい安全保障、経済安全保障を考えていかないと、こういう事態のときに自国で何もできなくなってしまうことになりうるということが今回教訓として上がってきていると思いますので、ここは本当に真剣に考えないと、この後も似たような事態が起こる可能性は十分あるわけですから、ここはちゃんと政府は討論していってほしいなと思います。
井上キャスター:
確かにこれは安全保障っていう考え方が必要かもしれませんね。
(08日20:08)
ウクライナ情勢悪化で「明太子」にも「サケ」にも「食卓」への影響必至
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