「クリスマスを家族みんなで祝いたい」。ささやかな夢を叶えるため、人々は100kmを超す危険なジャングルを歩き続ける。南米コロンビアの小さな港町から“夢の国”アメリカを目指すハイチ難民の今を取材した。
(取材日:2021年10月23日―27日)撮影:市川正峻(ニューヨーク支局)山口貴史(サンパウロ通信員)
南米・コロンビアの北部に位置する町、ネコクリ。人口7万人ほどの小さな港町の海岸沿いには無数のテントが立ち並ぶ。カリブ海の島国・ハイチからやってきた難民たちの住処だ。
2010年に起きた大地震、そしてその後の貧困と治安の悪化で、多くのハイチ人がブラジルなど南米の国へと逃れた。しかし、コロナ禍の影響で職を失うなど生活は困窮。生き抜くために、陸路でアメリカへの移住を決意したハイチ難民がこの町に殺到している。
■劣悪な生活環境、それでも母国には帰らない
ハイチ難民のニクソン・チャーレスさん(43)
「大統領も殺され、状況は最悪です。生活できる環境ではないです」
一家でネコクリに住むニクソン・チャーレスさん(43)は、母国・ハイチの状況をそう語る。今年7月にモイーズ大統領が暗殺されるなど、治安の悪化が深刻なハイチ。今の状況下で、母国へ戻る選択肢はない。
しかしこの町での生活環境も到底良いとは言えない。狭い部屋に8人で寝泊まりし、庭で汲んだ水を飲む毎日。幼い娘は体調を崩し、点滴を打つ事態にもなった。
■“死のジャングル”を渡る
チャーレスさん(43)
「ジャングルの中を急ぐと苦しくなって、歩けなくなり死んでしまうこともあるでしょう」
チャーレスさん一家がアメリカを目指す中で、必ず通らなければならない場所がある。
それが“死のジャングル”と呼ばれる、100キロ以上にわたる密林だ。ビザの関係から、海路や空路で北中米の国に入ることのできないハイチの人々は、陸路で国境を越えていくしかない。それはとても過酷で、危険な旅だ。今年に入って、200人以上がこの死のジャングルで亡くなったと推定されている。
チャーレスさん(43)
「ほかに道がないので行くしかないです。この道しかないのですから」
そう語るチャーレスさんの表情には、決意とある種の諦めが入り混じる。
■「人生は家族一緒に」
チャーレスさんの長女・ジュサーラさん(13)は、父が死のジャングルを渡る旅について十分な説明をしてくれないことに不安を覚えている。しかしそれでも、命の危険があるこの旅を乗り越えて、叶えたい夢がある。
チャーレスさんの長女ジュサーラさん(13)
「家族がいつもそばにいて、クリスマスは家族みんなでお祝いするの」
アメリカでしっかりとした生活を築いて、いつの日かハイチに残った家族も良い生活ができるようになるのが彼女の一番の夢なのだ。ジャングルで命を落とすかもしれない境遇にある彼女が、明るく笑いながらこう続けた。
チャーレスさんの長女ジュサーラさん(13)
「“人生は家族一緒に”。父はいつもこう言っているわ。それが私の叶えたい夢。その夢が叶ったら他のことはきっと何とかなるの」
この家族もまた「難民の暮らす街町」を出発した。(13日09:00)
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「人生は家族一緒に」ハイチ難民 ある家族の肖像【カメラマンCLIP】
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