大きな地震や大統領の暗殺など、政情不安が続くカリブ海の島国ハイチの難民。“死のジャングル”と呼ばれる危険地帯を、小さな子どもを連れて進みます。家族を待ち受けていたものとは?
■「娘たちは良い国で生活してほしい」米国移住を決意した家族
南米コロンビア・ネコクリ。海辺の小さな町に、いま、難民が殺到しています。海岸に立ち並ぶ難民のテント。この先を暗示するかのように、強風が容赦なく吹き付けます。ここで、ハイチ出身のジャンさん家族に出会いました。ジャンさん、妻マリアさん、6歳のサライカ、2歳のマリアの4人家族です。
ジュニオール・ジャンさん(26)
「娘たちには、良い国で生活して欲しい。私たちは大変苦労してきたので同じような人生を歩んで欲しくないです」
■地震、コロナ、政情不安 母国には戻れない
11年前の2010年、ハイチを襲った大地震。その後、ジャンさんは仕事を求めブラジルに渡りました。ショッピングモールに勤めていましたが、コロナ禍で解雇され、職を転々とするも、暮らしが全く成り立たなくなりました。
しかし母国のハイチではモイーズ大統領が暗殺されるなど、政情不安と治安悪化で戻ることができず、アメリカへの移住を決意。バスを乗り継ぎ、1か月前コロンビアの、この港町に辿り着きました。
長女 サライカちゃん(6)
「私の夢はバレリーナになること。バレリーナが大好きなの」
記者
「バレリーナになれそう?」
サライカちゃん
「うん」
アメリカでの夢を語るサライカ。あどけない2歳のマリアは、ようやく言葉を口にし始めたところです。
■妻が恐れる“死のジャングル”とは
妻 マリエさん(25)
「実は、私は怖いんですよ。何が起きるかわからないし、どこに危険があるかわからないですし」
妻が怖れているものはコロンビアとパナマの国境に広がる100キロ以上の密林、“死のジャングル”とも呼ばれるダリエン・ギャップです。南米からアメリカを目指し、陸地を移動するには通過しなければならず、歩いて抜けるのに6日以上かかります。
今年だけでも死者は、子どもを含め、200人以上にのぼると推定されています(国際移住機関などより)。感染症や毒ヘビ、さらに武装組織による略奪、レイプなども多数報告されていますが、希望の地・アメリカを目指しジャングルを渡る難民は急増しています。2021年は10月までで既に、去年の10倍以上にあたる約9万5000人がこの地を渡りました。そのうち2万人が子どもなのです。
10月25日、ジャンさん家族が、ボートに乗り込もうとしていました。ジャングルに入るためには、まず、海を渡らなければなりません。
ジュニオール・ジャンさん
「31日間もこの町にいて、ここまで本当に長かったです」
難民用ボートの席は1か月先まで完売。難民が殺到したことから、ボートに乗る人数が1日500人に制限されているのです。難民のなかには、席が空くのを待てず、真夜中に密航するケースも後を絶ちません。転覆事故も相次ぎ、10月も、子どもを含む3人が死亡。6人が行方不明になっています。
■ギャングは難民の敵か味方か
萩原豊記者(コロンビア・アカンディ)
「移住を目指す人々が今、海での移動を終えて到着したところです。ジャンさん家族も陸に上がりました」
バイクで川を渡り、ジャングルへの入り口を目指します。その手前には、ギャング組織の支配地域があります。難民は、1人200ドル、ジャンさん家族は4人なので800ドル(約9万円)を通行料として支払わなければなりません。今年だけでも、すでに10万人。約23億円がギャング組織に渡った計算になります。“難民を食い物にしているのではないか”。ギャング組織のメンバーに話を聞くことができました。
ギャング組織のメンバー
「いや、私たちの活動は難民へのサポートだ。私たちがいなければ、もっと多くの人が命を落としている」
ジャングルへの入り口であるこの難民キャンプでは、約500人が一晩を過ごします。
ジュニオール・ジャンさん
「いつ、たどり着けるかは分かりませんが、難しい道中になるだろうと感じています。明日はどうなるか分かりません。神のみぞ知ることです」
■命懸けの旅“死のジャングル”へ
翌朝。
ジュニオール・ジャンさん
「行こう!行こう!行こう!みんな行こう」
午前6時、ジャンさん家族は“死のジャングル”へと向かいました。命懸けの旅です。
萩原記者
「いま、家族の人たちが川を渡っています。川の流れは非常に速くて、幼い子どもにとっては大変険しい道のりとなっています」
多くの難民たちが川を渡ります。その中に長女を肩車、次女を抱っこして歩くジャンさんの姿も。
ジュニオール・ジャンさん
「序盤は少し大変でしたね。これから何が待ち受けているのか」
長女・サライカちゃん
「私はすごく元気。川の中を歩くのが楽しい」
妻・マリエさん
「行きなさい、行きなさい。怖がらなくていいから」
道なき道を進みます。
ジュニオール・ジャンさん
「(次女に向かって)頑張るんだ!」
出発して13時間。パナマとの国境まで辿り着きました。
ジュニオール・ジャンさん
「神のおかげでここまで・・・。簡単にここを乗り越えることはできません。自分を信じるしかないです。努力と強い忍耐力が必要です」
翌朝、ジャンさん家族は再び歩き始めました。ここからさらに険しさが増し、ジャングルを抜けるには5日以上かかります。ジャンさん家族は、今、どこにいるのでしょうか。
■ジャンさん家族はいま
<news23スタジオ>
小川彩佳キャスター:
ハイチ難民のジャンさん家族が私達の取材の後どうなったかなんですが・・・。
国山ハセンキャスター:
7日間かけて死のジャングルを抜けて、パナマに到着したということでした。11月4日に現地取材班に家族の写真が届いています。
小川彩佳キャスター:
ここからさらにアメリカへの旅が続くということになります。生き抜くためとはいえ、小さなお子さんも命がけの行動が余儀なくされるという厳しい現実、心に留めておきたいですね。(05日23:58)
“死のジャングル”を命がけで進むハイチ難民の家族に密着 道なき道の先に希望は・・・【SDGs】【news23】
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