高層ビルの谷間を縫うように進む小さな車両。東京の都心と臨海副都心を結ぶ新交通システム「ゆりかもめ」が11月1日で開業30年を迎えた。
正式名称は東京臨海新交通臨海線。新橋駅(東京都港区)と豊洲駅(江東区)間の16駅、全長約14・7キロを結ぶ。6両編成で、高架の専用路をゴムタイヤで走り、騒音や振動が少ない都市型の交通機関だ。
深まる秋、休日に新橋駅から乗り込んだ。国内外からの観光客が多く、特に先頭車両の一番前がにぎわっていた。コンピューターが制御する無人運転により運転席がなく、進行方向に広がる湾岸エリアの眺望を楽しめるからだ。
一方で平日は通勤通学の足となり、朝のラッシュ時には3、4分に一本のペースで運行している。
開業は平成7(1995)年。翌年に臨海副都心で予定されていた世界都市博覧会の会場に向かう輸送手段として、急ピッチで整備が進められた。だが開業直前に、当時の青島幸男都知事が都市博の中止を決定。先行きが不透明な中で走り始めた。
「空気を運ぶのか」。そう懸念されていたが、その後に東京国際展示場「ビッグサイト」でのイベントや、新設された商業施設が多くの人を呼び込み、「ゆりかもめ」も乗客数を増やしていった。開業年度は一日の平均乗車人数が約2万7000人だったが、令和5年度には約12万人へと成長した。
沿線で暮らす人々も増えた。台場地区に移り住んで15年になる浅田梢さん(47)は、自身が暮らす街を愛着を込めて「島」と呼ぶ。「島から出ると人も多く、歩くのに戸惑ってしまうことも。ゆりかもめの車内でオン・オフを切り替えてます」と笑う。
日々、開発が進むウオーターフロント。そこに「ゆりかもめ」がない姿は、今や想像できない。眼前に広がる車窓から飛び込んでくる街のパノラマは、東京の新しい名物になった。これからも新しい景色を見せ続けてくれるだろう。(文・写真 鴨川一也)
【探訪】新交通「ゆりかもめ」開業30年 苦難乗り越え…湾岸エリアで観光や通勤通学の足に
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