チョウやトンボが舞い、夜にはタヌキが闊歩する。1970(昭和45)年の大阪万博の跡地はいま、鬱蒼とした森になっている。
閉幕から55年。跡地利用に「緑に包まれた文化公園」が採択され、万博記念公園(大阪府吹田市)ができた。各国パビリオン撤去後の約100㌶には、性格の異なる多様な森がある。
設計は当時33歳の造園家、吉村元男さん(87)に任された。
大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」だった。だが、展示は最先端の技術や工業製品など「進歩」の方に偏っていた面もあった。吉村さんは里山を切り開いてつくった万博会場に「生き物が暮らす森ができてこそ『調和』が生まれる」と信じた。そして、難しい仕事に挑んだ。
水路や高低差のある地形を造り、「通常なら100年はかかる」(吉村さん)ところ、30年ほどで人工の森を造り上げた。それはいつのころからか、「奇跡の森」と呼ばれるようになり、多くの木々が葉を茂らせている。
テーマ館だった「太陽の塔」も万博が遺したもののひとつだ。内部展示も復元され、どこか底知れないパワーを感じるために、いまも訪れる人が絶えない。今年8月には国の重要文化財に指定された。太陽の塔で展示されていた世界各地の民具や仮面は、昭和49年にできた国立民族学博物館へ移され、世界に思いをはせることができる。
現在、大阪市で行われている大阪・関西万博の会場にも「奇跡の森」から樹木が引き継がれた。約700本が会場中央の「静けさの森」に移植され、癒やしの空間を作り上げている。
大阪・関西万博も閉幕まで1カ月を切った。祭りのあと。それは将来、どんな遺産となっていくのだろうか。
(写真報道局 鴨川一也)
【探訪】70年大阪万博 「奇跡の森」育んだ調和
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