太陽が顔を出す少し前、朝焼けの空が湖面に映り、燃えるような風景が広がった。水面に浮かぶカモたちのさえずりと、「コー、コー」と鳴くハクチョウの声が響き、辺りは野鳥たちの生命感にあふれていた。
訪れたのは新潟県阿賀野市にある「瓢湖」。周囲約1200メートル、面積約9.4ヘクタールの小さな湖で、かつては隣に小池があり、瓢簞のような形をしていたことから「瓢湖」と呼ばれるようになったといわれている。もともとは寛永2(1625)年の大干ばつの対策として、江戸時代に造られた農業用水池。現在は農業用水路が整備され、ため池としての役目は終えたが、冬場に多くのハクチョウが渡来する「白鳥の湖」として有名だ。
湖の朝は慌ただしい。水面に佇んでいたハクチョウたちが、餌を求めて周辺の田んぼや川に向かって次々と飛び立って行く。羽ばたきながら水かきで水面を蹴って助走する姿は豪快で、しかも愛らしい。
ハクチョウは毎年10月上旬に第一陣が飛来。11月下旬のピークには5000~6000羽が羽根を休め、翌3月半ばごろまでにシベリア方面に帰っていく。今季は昨年11月に過去2番目の9051羽を観測。今年1月31日時点で5411羽と、飛来数は例年に比べて多いという。
シーズン中は1日に3回、瓢湖の環境整備に携わる「白鳥おじさん」による給餌も行われている。3代目を務める斎藤功さん(75)が姿を見せると、無数のカモたちと、ハクチョウが一斉に集まってくる。「来ーい、来い来ーい」と声を掛けながら餌を撒くと、鳥たちの〝大争奪戦〟が始まる。訪れた観光客たちも歓声を上げるほど、その様子は圧巻だ。
斎藤さんは「遠路はるばる訪れた珍客をもてなすような気持ちで、感謝を込めて接している」と話す。地元のパン工場から寄付されたパンの耳に、粃と呼ばれる未熟米を混ぜて撒いているが、特に幼鳥には多めに餌が届くようにしているという。
昭和29年、初代「白鳥おじさん」の吉川重三郎氏が、長男で2代目の繁男氏と共に4年越しでハクチョウの人工給餌に成功。この年、国の天然記念物に指定され、平成20年には水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する「ラムサール条約」にも登録された。
瓢湖を管理する阿賀野市公園管理事務所の渡辺真二さん(52)は「ハクチョウたちはあくまでも野鳥です。立ち入りが禁止されている場所には入らない、餌を与えるときには指定のものを使用するなど、マナーを守って観察を」と話す。
自然豊かな「地域の宝」を守るため、地元の小学生が参加する「白鳥パトロール隊」も保護活動に携わるるなど、世代を超えて地域ぐるみの取り組みが進められている。
【水辺の物語】生命輝く白鳥の湖 新潟・瓢湖
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