多発する自然災害や人口増加など、食の安定供給が求められる中、発光ダイオード(LED)を活用し生鮮品を育てる一次産業の存在感が増している。気候変動に左右されず、安全で高品質な生産を実現する光の技術。その最前線では、医療や宇宙開発、そして、被災地復興などあらゆる分野での可能性を広げている。
色とりどりに輝く赤、青、緑―。近未来のような光景を織りなす玉川大学(東京都町田市)の植物工場。太陽光の代わりに照明を使い、湿温度を制御しながら、レタスやトマトなどの野菜を栽培している。農学部の渡辺博之教授は「光の波長によって植物の成長がガラリと変わるので面白くて仕方がない。日々発見の連続です」と話す。
赤色の光はレタスの生育を早め、苦みを抑制し、赤と青の混合色はレタスに含まれる抗酸化成分を高めるという。LEDの単色性を生かし、植物の生育に必要な波長の光を当てることで効率的な生産を可能に。渡辺教授は「自然ではできないおいしくて栄養価の高いこれまでになかった野菜を作るのが目的だ」
カリウムを約2割にまで抑え、摂取制限のある腎臓病の患者でも食べられる野菜の開発のほか、宇宙空間でも作れるジャガイモの研究などが進められ、新たな農業の未来像を描く。
日没を迎えた漁港で、緑色の光が漏れ、周囲を照らす不思議な雰囲気の一角がある。灯りの正体は、幻の魚とも呼ばれる「ホシガレイ」の陸上養殖に用いられている緑色LEDだ。
担当する岩手県宮古市田老町漁協の指導増殖課長、畠山昌彦さんはLEDも含めて「良いと言われているものは、全部やる」と心境を話す。
昨年6月末、10トン水槽1基で平均220グラムから養殖を始め、目標を1キロに設定。無理だと言われたが、照射時間を調整、夏の水温の上昇を乗りきり、12月には最大で1.2㎏へと成長。10尾の初出荷にこぎつけた。これまでに約100匹を出荷した。
東日本大震災の津波は田老地区にも壊滅的な被害をもたらした。奇跡的に無事だったコンブの種苗生産施設で、岩手県中の依頼を引き受けた。「家も流出し、施設を再建する中で、生産能力の倍のコンブの種苗を生産しました」と畠山さん。新たに整備された道路の高架下で、ウニやホシガレイの養殖に挑戦している。
設備が整っていけば、コンブの漁期以外でも、漁師の家族の収入につながる。「将来、海や漁業の環境もどうなるか分からない。できることはなんでもやっていきたい」と話す。
煌々と輝くLED。研究者たちの熱意とともに明るく未来を照らし出す。(取材班)
企画「テックテック」光が育む一次産業
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