やっとここまできたー。この日のために作った「まんでうまい」と書かれた新しいのれんをかけ終えた南谷良枝さん(48)の目に涙があふれた。
1月1日午後4時10分、正月気分を一変させる「能登半島地震」が石川県を襲った。震度7の揺れで245人が亡くなり、今も8000人以上が避難生活を強いられる。
「日本三大朝市」の一つとして、多くの人が訪れる輪島朝市も地震による火災で約240棟が焼失した。
17歳の頃から30年以上、干物や塩辛などを生産し、朝市で販売してきた南谷さんの店舗も無残な姿に。「こんな残酷なことが起きるのか」。変わり果てた朝市通りの姿に言葉を失った。
市内にある自宅も一部損壊の認定を受け、隣にある加工場も壊滅状態。祖母の代から受け継いできた「いしる(魚醤)」のタンクも横倒しに。今も水道が復旧せず再開の見通しは立たない。
ほぼ全てを失ったが、後継ぎとして働く長女の美有さん(22)のためにも諦めることなく商いを続ける。2月下旬には、冷凍庫の中で、被害を免れた商品の全国発送を始めた。
そんな中、朝市の歴史を絶やすまいと「出張輪島朝市」の開催が決まる。場所は輪島から100キロほど離れた金沢市金石地区で、3月23日の午前8時オープン。
当日はあいにくの雨だが開店前からお客さんが列を作った。朝市のシンボルであるオレンジ色のテントを使った約の露店が軒を連ね、店頭には自慢の品々が並ぶ。海産物や漆器などを求めて、1万3000人が詰めかけた。
南谷さんの「南谷良枝商店」は朝市の真ん中で店開き。自慢のイカの塩辛は1カ月分の販売量を1日で売り切った。
今回の出張開催は「復興の第一歩」と南谷さん。「昔の朝市の活気を取り戻したみたいで興奮した」。楽しみに待っていてくれた常連客らとの再会も果たした。
次回開催は5月4日だが、以降は未定。場所を移しての開催も模索している。「朝市は何も知らない17歳の頃から育ててくれた私のすべて。自然豊かで人も食べ物も最高な輪島に必ず戻りたい」。静かに話す南谷さんの瞳は、決意と希望で輝いていた。
「絶対に輪島に戻る」朝市復活目指して金沢市内で出張開催
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