雲間から太陽が顔を出すと、段々畑が複雑な幾何学模様を描きながら黄金色に輝いた。日没前の、一瞬の出来事に息をのんだ。
長崎県雲仙市の旧南串山町域では、傾斜がちな土地に石垣で築かれた段々畑が広がる。高台から見渡す約800枚の棚畑は、まるで南米ペルーの世界遺産、マチュピチュのように壮大な光景だ。
毎年3月ごろ、棚畑のジャガイモ畑には、雑草対策や保湿などを目的にビニールが張られる。晴天の夕刻、このビニールが夕日を反射して一斉に輝く。
棚畑ではジャガイモを筆頭に、レタス、ブロッコリーなども栽培されている。十数年前までは一面がジャガイモ畑だったが、近年、収益性や高齢化などを理由に鞍替えが進み、離農などによる耕作放棄地も出てきた。
地域の農業を盛り上げようと、令和2年、地元農家の寺田裕介さん(47)らは「なんぐしデジマプロジェクトチーム」を発足。
4年ほど前まで生産されていた、味は良いが栽培が難しい幻のジャガイモ品種「デジマ」を復活させ、ふるさと納税やインターネット販売などを活用して高付加価値商品として出荷している。寺田さんはデジマについて「甘みが強くホクホクとした食感で、荷崩れしにくい。どんな料理にも合う」と太鼓判を押す。
4年目を迎えたデジマプロジェクトは、ふるさと納税分が品切れになるなど好評で、徐々に栽培面積も増えている。
寺田さんは「インターネット販売には、自分たちで価格を決めて消費者からの声を直接聞ける魅力もある。若者が農業したいと思えるような、カッコイイ農家を目指したい」と語る。
南串山町を巡ると、20~30代の若い農家が目立つ。インターネットを通して、生産者と遠くの消費者が直接つながり、顔が見える関係で取引する。輸入作物に押される日本の農業が目指すべき一つの形かもしれない。
(写真報道局 桐原正道)
【探訪】「九州のマチュピチュ」黄金に輝く棚畑 長崎・南串山
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