島根県東部と広島県北東部を結ぶJR木次(きすき)線で春から秋の間運行されてきた観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」が11月23日、ラストランを迎える。平成10年4月の運行開始以来、木次(島根県雲南市)ー備後落合(広島県庄原市)間60.8キロ(一部は出雲市始発)を走ってきた人気観光列車は、車両の老朽化や部品調達が難しくなったため役目を終える。
列車の名称は、沿線の島根・奥出雲ゆかりの神話「ヤマタノオロチ」にちなんだもの。休日を中心に1日1往復運行されてきた。
現在の車両は、昭和47年製ディーゼル機関車DE10形と、かつて山陰本線を走った夜行急行「だいせん」などで使用された12系客車の編成。
2両の客車のうち1両は窓にガラスがなく、風を受けながら自然を間近に体感できる。
見どころも多く、中国山地の山間部や田園地帯は美しく、沿線には松本清張の小説「砂の器」の舞台となった亀嵩(かめだけ)駅もある。
途中、出雲坂根から三井野原(みいのはら)までの標高差は約160メートル。この急勾配を全国でも珍しい逆Z型に上り下りしていく「三段式スイッチバック」は路線のハイライトだ。
出雲坂根駅には県の名水百選の一つ「延命水」が湧き出るほか、周辺には煙が立ち込め、炭火で焼かれた焼き鳥の香ばしい匂いが漂う。
同駅で約30年焼き鳥を販売してきた大櫃(おおびつ)真紀子さん(63)は「これまで大きな事故もなくて良かった」と、最終日までおろち号の安全運行を願った。
「トロッコ車両には線路わきの草木や虫なども入ってくるが、風を浴びながら沿線の自然を満喫し列車の旅を味わってもらえれば」と話す。
JR西日本は、おろち号の運行終了後、新たな観光列車「あめつち」を木次線などで運転する予定だが車両の性能上、同線内は宍道(島根県松江市)ー出雲横田(同県奥出雲町)間に短縮される予定で、スイッチバック区間を含めた出雲横田ー備後落合間は運転されない。
大櫃さんは「トロッコ列車がなくなっても普通列車に乗って、これからも少しでも多くの人に変わらぬ沿線の風景を楽しんでほしい」と話す。
車窓をのぞけば手を振る地元民に見送られ、停車駅では旗を振って出迎えられる。乗客はさまざまな「おもてなし」を受けながら旅をする。
おろち号は運行開始から令和4年度まで約34万人が利用し、令和4年には年間約1万5000人が乗車した。
神話の里を走り続けてきたおろち号。23日のラストランまで沿線の魅力を伝え続ける。
(写真報道局 大西史朗)
ラストラン 奥出雲おろち号
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