木造の劇場と昭和の映画ポスター、年代物の映写機を守り続けてきた。父から受け継いだ家族同然の宝物だ。
「お客さんが来て初めて映画館は生き生きするもんだ」
福島県本宮市の中心部にある「本宮映画劇場」の2代目館主、田村修司さん(87)は、ようやく訪れたその日に目を輝かせていた。
劇場は、大正3年に町の公民館「本宮座」として建てられた。まだテレビも普及していない時代。人々は、大衆演劇や歌謡ショー、映画を楽しもうと押し掛けた。
しかし、高度経済成長期に入り、テレビが一般家庭にも行き渡ると、昭和38年には客足が途絶え閉館を余儀なくされた。
「当時は、もう取り壊した方がいいという声が多かったんだ」
田村さんは自動車のセールスマンをしながら劇場のメンテナンスを続け、定年後に上映会を不定期で再開した。
そんな中、再び困難に見舞われる。令和元年、台風19号に襲われ、劇場と自宅が浸水した。映写室は被害を免れたが、保存していたフィルムが半分ほど水に浸かった。そのままコロナ禍になり、細々と続けてきた上映会も中止せざるを得なかった。
だが、田村さんは何度でも立ち上がる。相棒のカーボン式映写機の手入れやフィルムの復旧に手を休めることはなかった。
10月中旬、待ちに待ったその日が来た。5年ぶりの上映会だ。客席になじみの顔がそろう。
「体と一緒で映写機も時折動かさないとだめなんだ」
場内が暗くなり、上映開始のブザーが鳴る。それまで穏やかだった田村さんが、映写技師の鋭い目つきへと変わった。来年開館110年を迎える本宮映画劇場の新しい物語の幕が上がった。
(写真報道局 納冨康)
【探訪】「キネマの殿堂」守り続けて110年 福島「本宮映画劇場」
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