「おはようございます!」。子供たちの元気な声が響くと軒先から「いってらっしゃい!」とおばちゃんが笑顔で手を振る。江戸時代にタイムスリップしたような町並みが残る島根県大田市の大森町。重要伝統的建造物群保存地区に指定され、世界遺産の石見銀山があることでも知られる。豊かな自然の下、約400人が暮らす小さな町に、UターンやIターンの家族を積極的に受け入れ園児を増やしている保育園がある。
「大森さくら保育園」。10年前は園児が2人にまで減少、存続が危ぶまれる中、地元企業などによる若い社員の移住推進により、園児が増加に転じ、今は24人が通う。
保育園を運営するNPO法人石見銀山いくじの会の松場奈緒子理事は「みんな子供でみんな孫。町の人たちに子供たちの顔と名前を覚えてもらっていて町全体で育ててもらっていると感じる」と話す。
自身も5人の子供を育てる。小学校まで大森町で暮らし、東京の専門学校で学んだ。平成23年の東日本大震災をきっかけに都会での子育てに限界を感じて故郷に戻ってきた。
みんなが顔見知りのこの町では、子育てを終えた世代からのアドバイスも頼りになる。子供たちは小さなコミュニティーのなかで自分の役割を見つけて成長する。そんな姿を見て親たちも気づかされることが多いという。
今年度から、約2週間の期日で都市部に住む家族を受け入れ、町での暮らしを体験する取り組みを始めた。
滞在中は、古民家を改装した宿泊施設でリモートワークをしたり、自然あふれる大森町の暮らしを楽しむことができる。
「1回の滞在で終わるのではなく、ここでの暮らしを楽しんでもらって、このまちのファンになってもらえたら」と松場さん。町と連携し、子育てと仕事の両立をサポート、将来の移住も視野に入れる。
「ここでの暮らしを体験した子供たち、またその次の世代へ。第二の故郷として長いスパンで幸せを紡いでいきたい」。
小さな谷に今日も子供たちの声がこだまする。
世界遺産の町で子育て 島根県大田市大森町
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