福岡市から沖に約140㌔の日本海に浮かぶ対馬。空気が澄んだ日、島北部からは韓国・釜山の高層ビルや山並みがくっきりと見えた。
距離にして50㌔ほど。長崎県対馬市にあたるこの島は、日本で最も国境を意識させられる場所の一つだ。
約2万8千人が暮らす南北約82㌔の島で、車を走らせるとハングル表記の標識や看板が目に留まった。ラジオからは韓国語の放送が流れる。
北部の比田勝港と釜山は高速船で約1時間。釜山市民にとって最も手軽な海外旅行先が対馬だ。平成30年には韓国人約40万人が対馬から入国。宿泊に食事、ショッピング…。島の大きな収入源の一つになった。
それも新型コロナウイルス禍で一変した。3年前から船の運航は途絶え、今も再開のめどはたっていない。
港近くでレンタカー業を営む今村純一さん(48)は「飲食店前の韓国人の行列もなくなり、町が静かになった」と話す。売り上げは最高時の1割弱に落ち込んだ。車の台数も5分の1に減らしたという。「少しでも早く船が再開してほしい」と旅行者を待ちわびている。
ただ「経済と国防は別」と言い切る島民も多い。懸念しているのは韓国資本が対馬の土地や不動産を購入している動きだ。
日本海と東シナ海をつなぐこの島は古くから各国が支配を争ってきた要衝。今も飛鳥時代や明治時代などの戦跡が多く残る。
免税店を経営する武末裕雄さん(78)は「日本の歴史上、外国との争いが最も起こっている場所と言っても過言ではない」と訴える。近年、中国が周辺で領海侵入を繰り返す尖閣諸島(沖縄県石垣市)などの南西諸島に注目が集まるが「対馬を忘れてもらっては困る」と強調する。
昨年12月、韓国・釜山で3年ぶりの花火大会が行われた。対馬の展望所に集まった島民は、海を挟んだ隣国の空に大輪の花が打ちあがると歓声を上げた。
交流と緊張…。花火が終わり静かになった丘の上。漆黒に染まる海の向こうにきらめくビルの明かりを眺めながら、「国境の島」が抱える複雑な現状に思いを巡らせた。(写真報道局 鴨川一也)
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海に囲まれた日本で国境を形作る離島に生きる人々の営みや自然、文化に写真で迫ります。
迫る大陸 交流と緊張の対馬
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