レンズの向こうで、茜色に染まった空を太陽がゆっくりと地平線に沈んでいく。目の前に延びる道路の延長線上に夕日が重なると、アスファルトの路面が燃えるように輝いた。わき上がる興奮とともにシャッターを切った。
北海道・知床半島の斜里町から小清水町にかけて、町道と国道が約28.1kmもの直線で続く区間がある。斜里町の丘の上にある「スタート地点」に立つと、地平線まで見通せることから「天に続く道」と呼ばれている。
その光景が約10年前から交流サイト(SNS)などで話題となり、年間約15万人もの観光客が訪れるようになった。
道そのものの歴史は古く、明治時代後期には大部分が農道などとして利用されていたらしい。スタート地点も平成12年ごろに舗装されたが、インターネット上で話題になるまで住民は見向きもしなかったという。
道の先に夕日が沈むのは、3月下旬と9月下旬の年2回。幻想的な光景を撮影しようと毎年大勢のカメラマンが集まるが、天候に恵まれず「空振り」に終わることも多いようだ。
4年前から年2回撮影に通っているという大阪市の会社員、山崎賢さんは「今年が一番きれいだった。(良い写真が撮れたけれど)来年もまた来たいです」と笑顔だった。
一方、斜里町は増加する観光客への対応に頭を悩ませている。スタート地点に整備された8台分の駐車場では足りず、路上駐車の車が列をなすことも。取材中にも農作業用のトラクターの通行を妨げていた。
農家の鶴巻智也さんは「有名になるのは悪いことじゃないけれど、事故が起きてからじゃ遅い」と気をもむ。
町は、交通トラブルの防止と観光振興のため、広場や駐車場の再整備を計画中だ。
夕日が沈むと、大勢いたカメラマンたちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。記者も、一編の壮大な劇を見た後のような感動の余韻に浸りながらカメラを片付けた。(写真報道局 桐原正道)
夕日につながる光の道 北海道・知床半島
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