段差をつけて幾重にも並ぶ本棚。天井から差し込む光が木漏れ日のように棚を照らしている。周囲360度をぐるりと本に囲まれた非日常的な空間に思わず立ち止まってしまった。
今年7月に開館した金沢市の石川県立図書館を訪れた。4階建ての円形劇場のような空間に約30万冊の本が開架されている。
旧図書館の老朽化に伴う新築で「思いもよらない出会い」がある場所を目指したそうだ。平成28年度の構想から携わってきた県文化振興課の嘉門佳顕さんが説明してくれた。
「日本では10人に4人しか図書館を使っていません。多くの人に利用してもらうための工夫を盛り込みました」と嘉門さん。
建築の壮大さに目を奪われてしまったが、本との出会いを演出する仕組みが随所にちりばめられていることに気づいた。
本棚に沿ってスロープを歩いていくと、背表紙ではなく本の顔である表紙が並ぶのが目に入る。本の分類も「好奇心を抱く」「世界に飛び出す」など独自の設定だ。
館内では「見てこの本、面白そう」と本をきっかけにした会話が聞こえてくる。図書館では珍しく、会話や携帯電話での通話も可能。
閲覧席は約500席あり、さまざまなタイプが用意されている。窓際の書斎のようなデスクに座ろうか、本棚の絶景を見下ろせるソファに座ろうか。
本を手にしたら自分だけのお気に入りの場所を探すのも楽しい。
開館から2カ月ほどで約万人が来館。早くも旧図書館の年間来館者数に匹敵するという。反響は大きく、遠方からの観光客も多い。
東京都内から訪れた森田義樹さん(33)は「海外の図書館みたいでワクワクする。1日いても飽きなそう」と興奮した様子で話していた。
県立図書館の愛称は「百万石ビブリオバウム」。ビブリオは本、バウムは樹木という意味だ。間もなく読書の秋。本の森の奥深くに踏み入れば、
素敵な出会いが待っているかもしれない。
本の森で出会う一冊 (石川県立図書館)
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