川霧に包まれた深い森の奥から一筋の光が近づいて来る。
「ピィーッ」
汽笛の音とともにディーゼルカーが森から顔を出した。線路の一部が真新しい鉄橋をゆっくりと渡っていく。11年ぶりの全線開通を前にした試運転列車だ。
福島・新潟県境の山間地域を結ぶJR只見線は、平成23年7月の豪雨で、会津川口駅(福島県金山町) 只見駅(同県只見町)間(27・6㌔)が甚大な被害を受けた。
JR東日本は同区間について当初、少ない利用客数や高額な復旧費用を理由に、全線再開に難色を示したが、地元自治体は反発。県が線路や駅舎を保有し、JRが運行を担う「上下分離式」で路線を維持することで落ち着いた。年間約3億円と見込まれる鉄道設備の維持費は、県と周辺市町村が負担する。
復旧工事は終わり、来月1日に全線で運転が再開する。不通だった区間も被災前と同じ1日3往復6本が走る予定だ。
「乗客が少ないとはいえ、生活路線なのでうれしい」。会津川口駅近くで「民宿朝日屋」を営む栗城和夫さんは、運転再開を歓迎する。
霧深く風光明媚な山間を走る鉄道として観光客にも人気の只見線の被災と東日本大震災の影響を受け、売り上げは落ち込んだまま。しかし、全線再開する10月は予約が殺到、満室の日もある。
栗城さんは「この人気をいかに持続させるかが今後の課題。地元で方策を考えて、きちんとおもてなしをしていきたい」と話す。負担金に見合う経済効果を生み出せるか、地域一丸の挑戦が始まる。
いま不通区間では運転士の訓練などのための試運転が重ねられている。今月6日には、自治体関係者や報道陣を招き試乗会が行われた。沿線には大勢の鉄道ファンが集まり、住民らが笑顔で手を振った。
沿線の集落には年ぶりとなる全線運転再開を歓迎するのぼりが至る所に掲げられている。そこには、こう大書してあった。
「おかえり 只見線」
霧の中を駆け抜け 11年ぶりの全線開通
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