ロシアのウクライナ侵攻を受け、来日した避難民は1700人超。滋賀県彦根市に逃れた女性はキッチンカーを調達し、郷土料理の販売を始めた。祖国の行く末を案じながら、「料理を通じて日本に恩返しがしたい」と、各地を駆け巡っている。
8月21日、JR大阪駅前の「うめきた広場」。ウクライナ国旗がはためくキッチンカーの前に行列ができていた。客が受け取るのはウクライナの家庭料理「ブリンチキ」。クレープのような生地に鶏肉やチーズなどが包まれ、もちもちした食感が特徴だ。初めて食べたという大阪市淀川区の会社員の男性(61)は「上品で優しい味」と顔をほころばせた。
「キッチンカーで新しい場所に行くと人々が温かく迎えてくれる」。そう話すのはイリーナ・ヤボルスカさん(51)。ウクライナ東部のハリコフで会社員をしていたが、露軍の侵攻後、母のギャリーナ・イバノバさん(81)と祖国を離れた。頼ったのは彦根市に住むイリーナさんの娘のカテリーナさん(31)と夫の菊地崇さん(28)だった。
「日本へ来てからは本当にたくさんの人が優しくしてくれた」とイリーナさん。異国の生活にも徐々に慣れてきたが、手厚い支援に申し訳ないような気がしていた。「感謝の気持ちを伝えるために何かできることはないか」と思案し、娘夫婦と考えついたのがブリンチキの販売だった。
実は菊地さんがウクライナにあいさつに来た際、イリーナさんが振る舞ったのもこのブリンチキ。それで菊地さんと心を通わせたことを思い出し、「言葉は分からなくても、ブリンチキが日本とウクライナの架け橋になるかもしれない」と考えた。
クラウドファンディング(CF)で資金集めを始めると、およそ10日で目標金額を達成。先月から彦根市を中心にキッチンカーでの販売をスタートし、大阪や東京でも多くの人に母国の味を届けることができた。今ではウクライナ出身の11人と日本人スタッフ5人が販売に携わるようになり、運営会社の代表となった菊地さんは「雇用を生み出し、避難民の自立支援の場になれば」と意気込む。
イリーナさんの夫や友人は今も戦火のウクライナにとどまっている。一刻も早い終戦と平和への願いを込めて、イリーナさんはきょうもブリンチキを作る。(清水更沙)
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うめきたにウクライナ避難民運営のキッチンカー出店
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