初夏の青々とした山で頭部だけが灰をかぶったかのように色彩を失っている。ロープウエーで山頂に降り立つと、無数の〝白骨化〟した枯れ木が斜面を覆う寂しい光景が広がっていた。
蔵王連峰の地蔵岳(山形市、標高1736m)山頂付近に群生する針葉樹、アオモリトドマツが広範囲に及んで立ち枯れしている。
冬になると、一帯のアオモリトドマツは「アイスモンスター」とも呼ばれる樹氷をつくり観光客を魅了する。特に地蔵岳周辺は、ロープウエー駅の目の前でアイスモンスターを楽しめる蔵王の樹氷の表玄関だ。今は枯れ木に氷と雪が付着して樹氷になっているが、倒れてしまえば見られなくなる。
異変の始まりは、平成25年秋に起きた、トウヒツヅリヒメハマキという蛾の幼虫による食害だった。
林野庁山形森林管理署の益田健太署長(53)は、「かつてない規模の大量発生だった」と話す。
28年には衰弱した樹木をキクイムシが襲い「激害区域」となったこの一帯で、アオモリトドマツが約16haにわたって「全滅」(同署)した。
被害の拡大は収まったとみられるが、山形県内では、世界的に知られる観光資源でもある樹氷を守るため、マツ林を再生しようとする動きが広がっている。
群生地に、高さ20cmほどの苗木約80本が並ぶ一画がある。同署などが令和元年から毎年、試験的に約300m低地に自生したアオモリトドマツの幼木を移植しているのだ。初年度に植えられたものは3度の高地での厳しい冬に耐え、たくましく風に葉を揺らしている。
「心配だった冬を越えてくれた。楽観はできないが移植という手段に可能性が見えた」と益田署長。
しかし、アオモリトドマツの成長は遅く年に数センチほど。同署は、植樹や播種で被害前のマツ林の姿に戻すには約70年が必要と見込む。
世代を超えて課題を共有しようと、昨夏には地元の小中学生が現地で被害の実態を学ぶ森林学習教室も開かれた。
マツ林再生への挑戦は芽吹いたばかり。苗木とともに成長していく次世代が樹氷の未来を見守っていく。(写真報道局 松本健吾)
マツ林再生に挑戦「蔵王の樹氷」次代へ
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