赤茶毛の短角牛(たんかくぎゅう)が山間の牧場でのびのびと草を食べる。里の牛舎で過ごす冬を前に、緑の残る豊かな自然を満喫しているようだった。
岩手県久慈市山形町(旧山形村)は希少品種・短角牛の産地として知られる。「柿木畜産」2代目の柿木敏由貴(としゆき)さん(47)は約250頭を飼育する。3月に生まれた子牛は5月から10月まで、母親とともに標高700mの高地に放牧し、1年の半分を自然の中で育てる。
短角牛は旧南部藩時代に飼育されていた南部牛がルーツ。「霜降り」が特徴の黒毛和牛に比べて赤身が多く低脂肪で、健康志向に伴って関心が高まっている。
しかし、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で、生産者は危機的状況に陥った。県内の牧場で基準値を超える放射性セシウムが検出され、全県で出荷を停止。その後も風評被害で肉牛が売れない状況が続いた。
このとき柿木さんは生産者を応援するコミュニティーに参加することで難局を打開。「今年はコロナ禍で外食業界への売り上げが落ちたが、同じ仲間に再び助けられた」と話す。
山形町は東北で唯一の闘牛大会も行われている。今年は年4回のうち3大会が中止された。「震災のときは地元を元気づけようと続けたが、コロナには勝てなかった」と市の担当者。
闘牛は10月大会で再開し、柿木さんの牛も出場した。
まだまだ知名度が低い短角牛。「大好きなこの〝地下アイドル〟たちを、もっと多くの人に知ってもらいたい」と牛を見つめる。来年は丑(うし)年で年男になる柿木さんは、さらに一歩、前進の思いを強めている。(写真報道局 宮崎瑞穂)
冬を迎える岩手の短角牛 岩手県久慈市
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