ロシアの侵攻が続くウクライナ。首都キーウ(キエフ)の北西にあるイルピンの墓地を訪れた。針葉樹に囲まれた広大な敷地の一角で、作業員3人が土と汗にまみれ、シャベルで黙々と墓穴を掘っていた。
傍らでアレクサンダーさん(40)の埋葬が始まった。ロシア軍が侵攻した際、取り残された母親のナターリヤさん(62)を助け出そうと車で迎えにいく途中、軍の銃撃を受けて亡くなったという。
「息子よ。あなたが死んでしまって、私が生き残っても意味がないのよ」
棺にすがりつくナターリヤさん。語りかけるような涙交じりの声はとても細かったが、心を突き刺すように響いた。
ウクライナ侵攻を4月中旬から約2週間、現地で取材した。キーウ攻防の主戦場となった近郊のブチャやイルピンなどの街は、攻撃の爪痕が深く残っていた。
約1カ月も地下に幽閉されていたという女性は、体験を思い出し、顔を両手で覆った。比較的、日常が戻ったかに見えたキーウでさえ、険しいまなざしで前を見つめ、唇をきつくかみしめる少年に出会った。
ナターリヤさんの横では別の家族が埋葬の順番を待っていた。作業員が掘った墓穴に、こうして戦争犠牲者の棺が次々に埋められていくのだという。
アレクサンダーさんの青い棺と、ナターリヤさんの手にした黄色い花。それは一瞬、ウクライナの国旗のように見えた。街を、そしてこの国を覆う悲しみはいつ晴れるのだろう。
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息子よ 悲しみ覆うウクライナ
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