朝は吹雪模様となった。富山・立山をのぞむ谷間に走行音が響く。現れる2両編成の車両。「こんな天気でも走らせるんだ」。カメラを構えながらうれしくなった。その後もダイヤ通り運行を続ける富山地方鉄道(富山地鉄)の立山線。別の車両を撮影したころには雪は止み、立山に日光が差し込んでいた。
富山県が「鉄軌道王国」と呼ばれていることは、あまり知られていない。上司に話したときも「?」という表情だった。
県内の全市町村に鉄道が通っていることが理由の一つだ。全ての自治体、10市4町1村に駅があるのは都道府県で唯一。路線は計12あり、立山黒部アルペンルートのケーブルカーなどの観光路線もあるが、多くは生活路線だ。
鉄道網の充実に大きな役割を果たしたのが富山市に本社を置く富山地鉄だ。昭和5年の設立時から県内のどこからでも中心部への移動を1時間以内にしようという「一県一市街化」構想で路線を整備してきた。
もちろん現在はこうした路線も社会や生活の変化に直面している。少子高齢化や自動車の普及に加え、強い戸建て志向で住宅地が郊外に拡大しており、利用者が減少しているという。
状況は厳しいが、富山地鉄は平成21年、新線を敷いて路面電車を環状線化、令和2年には廃線危機のJR富山港線を受け継いだ「富山ライトレール」を吸収合併し、路面電車と直通運転を始めた。一時は100㌔を割った営業路線の距離は108.4㌔にまで復活している。
学生の頃から鉄道に乗るのが好きな私にとって、富山地鉄は「しっかりしている」印象だ。エリアを考えれば本数も多く、他のローカル鉄道なら運休しそうな天候でも、きちんと運行しているように感じる。
きっとそれは「鉄軌道王国」、そして利用者の生活を支えている誇りなのだろう。毎週本線を利用するという富山市の会社員、池田尚広さん(47)は「大学への通学には路面電車を使っていました。各路線に思い出が沢山つまっています」と話す。
雪国の地方鉄道は、地元と人々の鉄道への愛を燃料に走り続けていく。
(写真報道局 萩原悠久人)
白銀の鉄軌道王国 富山を駆ける
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