朝日を浴びて畑が赤く染まる。朝靄が晴れ、円筒状に積まれた落花生から影が伸びる。千葉県北部に広がる下総台地に秋の暮れを告げる光景だ。
全国有数の落花生の産地、千葉県八街市周辺。収穫最盛期の10月から11月にかけて、地元で「ぼっち」と呼ばれる、乾燥のための落花生の野積みが畑に並ぶ。
ぼっちは掘り起こした落花生の茎がついたまま、実を内側に放射状に重ねる。人の背丈くらいの高さに積み、稲わらで作った「帽子」をかぶせてできる。約1カ月乾かされた後に出荷され、新豆が出回る。
この風情ある光景も近年は様変わりしている。手間やコスト面から、稲わらでなくビニールシートを使用したり、積み上げずに乾燥させたりする農家が大半になったからだ。
八街市は畑作に適している一方、水田は少なく昔から稲わらは貴重だった。最近は高齢化などで離農するコメ農家も増えた上、収穫時にわらを切り刻んでしまうことも多いため、さらに入手困難になっている。
農家から豆を買い取り、加工・販売する「ますだ」の増田繁会長は「(帽子に)稲わらを使った方が上部から湿気が抜けやすく、豆が均一に乾く」と力説。「ぼっちは、先人たちが考え出した知恵。本当によくできた仕組み」と尊敬の念を込めて語る。
八街市の隣、佐倉市で落花生を栽培する桜井恒雄さんは、稲わらを使い続けている数少ない一人になった。2年前に稲作をやめたため、残るわらがなくなれば方法を変えざるを得ない。
「数年後には、見られなくなっちゃうかもね」。
桜井さんはつぶやく。
どこか愛らしさを感じる佇まいのぼっち。この晩秋の原風景がいつまでも残ってほしい。そう願わずにはいられなかった。 (写真報道局 鴨川一也)
影が伸びる 晩秋の原風景 「ぼっち」
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