台風一過の日差しが厳しい中、島へ向かうフェリーの甲板は潮風が心地よかった。
鹿児島県薩摩半島の西に長さ約38kmの小さな列島がある。東シナ海に浮かぶ甑島列島(薩摩川内市)は北から上甑島、中甑島、下甑島の3島で成り立ち、約4千人が暮らす。ユネスコの無形文化遺産に登録された伝承行事の「トシドン」やテレビドラマ化された人気漫画「Dr・コトー診療所」の舞台としても知られる。
昨年8月、中甑、下甑島間に長さ1533mの甑大橋が開通したことで3島が陸路でつながった。
橋の整備以前、甑島の島々は「近くて遠い島」と言われていた。鹿児島県本土と各島を巡回する定期船があったが、本土と島との往来が主で島間での自由な移動はできなかった。
上甑で海鮮料理店を営む日笠山佳代さんは「島や港によってとれる魚も日々違う。下甑に行かなければならない日も仕入れがしやすくなった」と話す。下甑には航空自衛隊の分屯基地があるため、名物のきびなご料理を求めて来店する関係者も増えたという。
下甑に蔵をかまえ、焼酎「甑州」を造る吉永酒造では以前、上甑や中甑への配達を業者に委託していたが、すべて社員による車での配達に切り替えた。川畑勇介さんは「これまでなかなか会えなかった酒屋や飲食店の方々と、顔を合わせて商品を届けることができるようになった」という。
青く透き通った海と急な緑の山肌。穏やかな洋上をまっすぐに伸びる巨大な橋。近い島がより近くなり、島民の生活も変わりつつある。
「甑はひとつ」大橋開通から1年
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