一見すると、密林の中に突如現れた古代文明の遺跡のよう。草木の緑に、ブーゲンビリアの花が彩りを添える。この建物が公共施設だと知り驚いた。
沖縄県本島北部の名護市は昭和45年に5町村が合併し誕生した。今年8月には市制施行50周年を迎えた。
同市庁舎は「沖縄の風土をとらえ、地域の自治を支える拠点として」昭和56年4月に完成した。300点を超える設計案から選ばれた庁舎は、沖縄建築様式で、駐留米軍が持ち込んだコンクリートブロックの技術を用いたものだった。
特徴的なのは、深い軒を柱で支える「アサギテラス」と呼ばれる半屋外空間。職員と市民が気軽に交流できるようにとの意図が込められ、閉庁時であっても自由に出入りできる。
外壁には「風の道」と呼ばれる通風管の入り口がある。ここから入る風が、真夏でも建物を自然の力で冷やしてくれる仕組みで、庁舎は平成12年の九州・沖縄サミット開催時まで、機械空調なしで利用されていたという。
近くに住む座喜味盛一郎さん(35)は、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、2人の子供をテラスに連れてくるようになった。「人が多い公園より不安が少なく、風が通り居心地もいい。生まれたときからある場所に、こんな形でお世話になるとは思わなかった」とほほ笑む。
県外からも建築を学ぶ学生や、観光客が多く訪れる。完成から来年で40年となる今でも、「市民に開かれた市庁舎」を体現している。(写真報道局 川口良介)
「風」と「緑」 人の集う庁舎 沖縄・名護市役所
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