空高く伸びた一本の松を山の稜線(りようせん)から姿を見せた朝日が照らす。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」で、津波に耐えた「奇跡の一本松」。7万本の中で唯一、生き残った松は、復興のシンボルとして被災地だけでなく、全国にも希望と勇気を与えてきた。
同市内では一本松のTシャツやキーホルダー、お菓子なども販売され、経済活動再開にも一役買った。しかし、津波で海水をかぶり漂流物で傷つき〝満身創痍(そうい)〟の一本松を待っていたのは、地盤沈下による冠水と、仲間を失ったため直射日光を過剰に浴びる過酷な環境だった。
復興の象徴を守ろうと、地元の「高田松原を守る会」や財団法人の「日本緑化センター」などが保護活動を展開。高潮時に海水が根元に入らないよう周囲に堤防を施したり、直射日光による高温と乾燥を防ぐネットを巻くなどしてきた。
7月には新芽や緑葉が伸びたことを確認。しかし、猛暑が過ぎた9月には新芽が変色するなどして衰弱、10月には樹木にとっては命取りの根腐れが判明した。日本緑化センターは今月13日、「蘇生は絶望的な状況」と発表。守る会の鈴木善久会長は「市民に希望と勇気をくれたのに...。悲しく残念」と肩を落とした。
しかし一方で、技術を駆使して一本松の〝子供たち〟を育てる活動も動き出した。14日には東京都内で関係者が会見。一本松の接ぎ木から3本のクローン苗と、枝に残った松ぼっくりから採取した種子から18本の苗を、それぞれ育てることに成功したと発表。「希望の光をつなぐことができた」と胸を張った。
後継となる木の育成に一定のメドが立ち、関係者の表情も明るい。鈴木会長は「『ありがとう』と一本松をねぎらいたい。育った苗から高田松原の再生を目指すことが一番の恩返しになる」と力を込めた。
探訪 岩手県陸前高田市「奇跡の一本松」 被災地から
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