「ほら見ろ、桜だ。桜が見えるぞ。日本の春…」
引き揚げ港・舞鶴(京都府舞鶴市)を舞台に創作された音楽劇「君よ 生きて」の一場面。引き揚げ船から久しぶりの祖国を見た元兵士の男性が、感極まった表情で叫ぶ|。
「具体的なエピソードがあったわけではありませんが、シベリア抑留から引き揚げてきた人たちが、満開の桜を見て感激する姿が自然と思い浮かびました。これぞ日本というイメージです」と、演出家の望月龍平さん(36)。この音楽劇には、日本人の心の原風景としての桜が効果的に使われている。
もっとも、「実際に引き揚げ船から満開の桜を見た人は少なかったのでは」と、舞鶴引揚記念館の長嶺睦学芸員。昭和20年から33年まで約66万人もの引き揚げ者を受け入れた舞鶴港には、延べ346隻の引き揚げ船が入港しているが、記録によると桜の季節に舞鶴に着いた船は少ない。「ただ、引き揚げて来た人たちの心の中には満開の桜が咲いていたのかもしれません」
舞鶴湾岸のあちこちで、今年も桜が咲き誇る。望郷の思いを胸に抱きながら、遂に祖国の土を踏むことのなかった先人たちにも、この美しい風景が、きっと見えていたに違いない。
さくら2015戦後をめぐる【4】引揚港 舞鶴(京都)
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