まぶしいほどの新緑と立ち枯れた木曽ヒノキが澄みわたる水面に映り込む。神秘的な光景に響く、ハルゼミやウグイスの鳴き声。昨年9月に噴火した長野、岐阜県境の御嶽山(3067メートル)から南へ8キロ、長野県王滝村の「自然湖」は息をのむ美しさだった。
昭和59年9月、一帯を長野県西部地震が襲った。直下型で震源の深さわずか2キロ。大きな揺れで御嶽山の南斜面などが崩壊、大規模な土石流が発生し王滝川の流れをせき止めた。自然湖は幅約100メートル、長さ約2キロに及ぶが、あくまでも川の一部とされ、正式名称はないという。
場所によっては地震前と比べて水面が20メートルも上昇し、多くのヒノキが水の中で立ち枯れしたところも。独特な景観は話題を集めたものの、犠牲者が29人いたことなどから王滝村は観光スポット化に消極的だった。しかし、財政難などもあり新たな観光資源を求める声が高まった平成16年、地震発生20年を機に、王滝村は自然湖を舞台にカヌーツアーの運営に乗り出した。
実施期間は毎年4月下旬から11月中旬。大自然を体感できる冒険として注目を集めている。王滝村から業務委託を受けツアーを手掛ける、おんたけアドベンチャーの二宮隆博代表(41)は「自然湖ができたのも御嶽山が噴火したのも、全て自然現象の結果で(自然がもたらした)変化だった。ここでは自然の素晴らしさ、美しさだけでなく、力の大きさや怖さにも気付かされる」と話す。
昨年9月の噴火以降、今も噴煙を上げ続ける御嶽山だが、火山活動は比較的落ち着いている。自然湖には火山灰も降らなかったが、それでも観光客は3割ほど減ったという。二宮さんは「訪れる人は減ったが自然の力に逆らわず、ゆっくり回復すれば…」と願っている。
探訪 地震が生んだ神秘の光景 長野県王滝村「自然湖」
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