撮影地を探して山中を歩くこと1時間半。尾根から斜面を下ると急に視界が開け、眼下には川にぐるりと取り囲まれた、丸い島のような地形が広がっていた。
三重県熊野市の木津呂集落は、北側の一部以外を北山川が取り囲み、馬の蹄鉄のような形になっている。住人はわずか11人。人よりも鹿やイノシシ、猿のほうが多いともいわれる。川を往来する観光ジェット船のエンジン音以外に聞こえるのは、鳥のさえずりや吹き抜ける風の音など、自然が奏でるものばかりだ。
かつて、北山川の主役は筏師が操る筏だった。その歴史は古く慶長9(1604)年、徳川家康が江戸城本丸を建てた際に、北山材と呼ばれる一帯のスギやヒノキを使用したとの文献も残る。上流のダム建設や道路整備などに伴い、昭和30年代後半に姿を消すまで約600年間続いたといわれる。
木津呂集落にも多くの筏師が暮らしていた。奈良、三重、和歌山の3県にまたがる峡谷瀞峡(どろきょう)にある、現在の田戸乗船場(奈良県十津川村)付近から北山川を下り、熊野川と合流して新宮まで約45キロ。大きくカーブする木津呂付近は難所だった。
探訪 丸い地形はUFOの隠れ家? 三重県熊野市・木津呂集落
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