東京電力福島第1原発事故による避難指示が9月に解除された福島県楢葉町の木戸川で18日、秋の風物詩となっていたサケ漁が5年ぶりに再開された。東日本大震災の津波で流された仕掛けの簗場も修復。ようやくこの日を迎えた。「このサケのように、一人でも多く楢葉に戻ってきてほしい」。里帰りしたサケを水揚げした関係者たちの胸には、そんな思いがあった。
「いいよー」。秋晴れの下、漁を仕切る漁労長、渡辺忠男さん(72)の威勢のいい声が川に響いた。
下流に張った網に、上流から別の網を流してサケを追い込む「合わせ網漁」。渡辺さんの合図に合わせ、左岸側からゆっくり網を上げていくと、サケが水しぶきを上げ、身を躍らせた。
この日の水揚げは約120匹。「こりゃ大漁だな」「そうだな。よく取れたほうだ」。木戸川漁協の組合員たちは口々にそう言い、満足そうに笑った。
木戸川は日本有数のサケの漁場として知られ、平成7年には捕獲数が本州一になったこともある。木戸川漁協は震災前年の22年まで毎春、人工孵化させたサケの稚魚約1600万匹を放流し、多いときで10万匹が遡上してきた。
しかし、今後数年間は遡上数が大幅に減るとみられている。同漁協によると、サケが戻ってくるのは放流からおおむね3~5年後。22年春に行った最後の本格的な放流から今年で5年が経過するためだ。
同漁協はサケの遡上復活を目指し、昨年と今年の春、いわき市の漁協から譲り受けた稚魚計2万匹を放流した。津波の被害を受けた孵化施設は来年3月に完成する予定で、来春には本格的に稚魚を放流する。
この日水揚げされたサケは放射性物質の検査などに回され、販売は予定していない。ただ、24年から始まった試験捕獲では、検査した全てのサケで検出限界値を下回り、この日の簡易検査でも放射性物質は検出されなかった。同漁協では少しでも早く販売を再開できるよう準備を進めている。
同漁協ふ化場長の鈴木謙太郎さん(33)は取れたばかりのサケを前に、この4年7カ月を振り返った。
「震災直後は町に戻れるかも分からない状況だった。たくさんの苦労を乗り越えて本格的な漁を再開できてうれしい。一人でも多くの町民が帰還し、町ににぎわいが戻ってほしい」
復興へ、町は一歩ずつ前に進んでいる。
避難指示解除の福島・楢葉 5年ぶりサケ漁再開
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