崖下へ続く階段を下りると、幾筋もの〝白い糸〟で埋め尽くされた岩壁が目の前に広がった。滝つぼに近付くと細かいしぶきが霧となって周囲を覆っていた。
天然のミストシャワーを全身に浴び、少しの間、暑さを忘れられた。
静岡県富士宮市の「白糸の滝」は、湾曲した絶壁に幅150メートルにわたって広がり落差20メートル、水量は毎秒1.5トンに及ぶ。富士山麓にしみ込んだ雨水や雪解け水は溶岩流の層を透過した後、水を通しにくい古富士泥流層にぶつかる。それが湧水になって崖の合間から流れ落ち、優美な光景を生み出している。
鎌倉時代、源頼朝が「この上に いかなる姫や おはすらん おだまき流す 白糸の滝」と詠んだとの言い伝えも残る。女性的な雰囲気に魅了されたのだろうか。昭和11年、国の名勝と天然記念物に。平成25年6月には世界遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成遺産に認定された。
今、滝つぼから約500メートルにある売店「ちどり屋」は明治43年の創業以来、平成24年まで100年以上、滝の横にあった。しかし、昔の景観を取り戻そうと平成22年、富士宮市は滝周辺の保存計画を策定。落石防止柵などの人工物撤去などとともに、ちどり屋も移転を打診された。
23年に台風の影響で1階が浸水したこともあり、4代目店主の渡辺邦浩さんは「先祖代々の場所を離れるには葛藤もあったが、100年前の景色でみんなが喜んでくれるなら…」と移転を決意した。
世界遺産登録には眺望も重要な要素とされるだけに「決まったときは感無量だった」と渡辺さん。登録から6月で丸3年が過ぎたが、渡辺さんは「まだ、スタートしたばかり。100年後も美しい景観を残してほしい」と願っている。
view 湧水が生み出す優美な姿 静岡県富士宮市 白糸の滝
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