雨が上がり、森はひんやりとした霧に包まれた。鬱蒼(うっそう)と生い茂るオシダの中に踏み入れると、目の前に神秘的な杉が現れた。ロウソクを何本もつけたキャンドルスタンドのように幹が途中から分かれ、乳房のような〝こぶ〟もつけている。
松江市から北へ約70キロ、隠岐諸島最大の島、島後(島根県隠岐の島町)。標高500メートル級の山が連なる森にあるこの杉は、「岩倉の乳房杉(ちちすぎ)」と呼ばれ、県の天然記念物に指定されている。
樹齢約800年、樹高約30メートル。島の最高峰・大満寺山(だいまんじさん)の裾野にひっそりとたたずむ。幹回り約11メートル、地上約4メートルのところで15本に分岐し、その部分から大小24個の「下垂根(かすいこん)」と呼ばれる乳房状の根が垂れ下がっている。
杉の周辺は、溶岩が崩れて堆積した岩場で、土は薄く保水力が乏しい。このため、独特の形をした根で必要な水分を空気中から取り込んでいるという。
名前の由来は、下垂根の形状が乳房に見えること、また「お嫁さんの乳の出が悪い時、ここを訪れ、乳の出が良くなるようにお参りした」という言い伝えからだといわれている。
view 「女の幸福の神」が宿る木 島根県隠岐の島町「岩倉の乳房杉」
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