夜明け前、静寂の世界をかき消すように、海鳥たちが一斉に鳴き始めた。太陽が昇り始めると、霧に包まれた海から、大小2つの丘が連なった小さな島が浮かび上がった。散歩中の地元の男性から「こんなにきれいに見える日はめったにないよ。いい日に来たね」と声をかけられた。
岩手県大槌町の大槌湾内に浮かぶ蓬莱(ほうらい)島。面積はわずか740平方メートル。作家の故井上ひさしさん原作のテレビ人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされている。340メートルの防波堤で陸地とつながっており、島内の神社には弁財天が祭られている。地元住民から「弁天さま」と親しまれ、漁師の守り神とされてきた。
平成23年3月11日、東日本大震災の大津波で同町は壊滅的被害を受けた。蓬莱島も、灯台や神社の鳥居は根元から倒壊、防波堤も流失したが、社殿は浸水したものの、流されず残った。
震災から2カ月後、同町赤浜の岡本大作さんは社殿内で、衣装はボロボロ、顔は傷だらけになっていた弁財天像を見つけた。「よくぞ流されずにいてくれた、これは奇跡だと思った」と振り返る。
岡本さんは「島は町の〝復興の象徴〟になる」と再興を決意、平成25年5月に地元有志と「ひょうたん島復興プロジェクト」を設立し、全国から支援金を募り、弁財天像や参道、鳥居の修復を行った。24年に灯台を海上保安庁が、26年には防波堤を県が再建。近くの神社に安置されていた弁財天像は今年4月、島の社殿に戻された。
震災から5年半。同町では、かさ上げ工事が続き、約2700余人が仮設住宅で暮らす。「プロジェクトは一段落したが、町はまだ〝非常事態〟。真の復興はこれからだ」と岡本さんは前を向いた。
view 復興の象徴〝ひょうたん島〟 岩手県大槌町「蓬莱島」
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