午前2時過ぎ、ヘッドライトを灯して霧に包まれた暗い登山道を20分ほど進むと、木立が開けた場所に出た。すでに6、7人のカメラマンが三脚を据え“その時”を待っていた。
冷え込みが一層増すと、視界を覆っていた霧が徐々に高度を下げ、雲海に。「見えてきた!」。居並ぶ人たちの中から声が上がった。月光と街明かりに照らされた雲海の合間に城が浮かぶ。日の出の頃には、200人近くのカメラマンが周囲に集まっていた。
「越前大野城」(福井県大野市)は天正8(1580)年に完成した後、安永4(1775)年に焼失。現在の天守は昭和43(1968)年に再建された。
“天空の城”として知られるようになったきっかけは、地元のアマチュアカメラマン、佐々木修さん(68)が4年前に撮った写真だった。
兵庫県朝来市の「竹田城跡」が“天空の城”として有名になっていたことから、佐々木さんは「越前大野城も条件がそろえば同様に見えるはず」と、周辺の山々をくまなく歩いた。城から800メートルほど離れた山中で撮影に成功した。
地元で知られていなかった光景は、にわかに脚光を浴びる。佐々木さんは撮影場所を人に聞かれればを惜しまずに教えた。「もっと全国にPRして地元を活気付けたい」と笑顔で話す。
越前大野城が“天空の城”になるのは年10回ほど。10月~4月、無風で湿度が高く冷え込んだ晴天の朝が出現しやすいという。福井市から来た上田弓子さんは「条件の良い日を選んで80回以上訪れたが、天空の城になったのはたった9回」だという。この絶景に巡り合うには運が必要だが、出合ったときの感動は格別だ。 (写真報道局 古厩正樹)
view 光の雲に浮かぶ〝天空の城〟 福井県大野市の越前大野城
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