冬の日本海。押し寄せる荒波が、切り立った岩壁にぶつかると、せり上がりながら砕け散る。ゴーゴーとうなる猛烈な西風は波の音さえもかき消した。
その時、ふわりと無数の白い点が絶壁から浮かび上がった。すると一気に、白波に向かって滑空。海面すれすれで急旋回、翼を広げ風に乗った海鳥が、波間を縫って上昇していった。時折、風が弱まると「ミャー、ミャー」という鳴き声が聞こえてきた。
島根半島の最西端、日御碕(ひのみさき)(島根県出雲市)の目と鼻の先に浮かぶ経島(ふみしま)は、面積約3000平方m、高さ約20mの小さな無人島だ。かつて日御碕神社の前身があったとされ、今も神域。年一度の神事などを除き、入島は禁じられている。
周辺には毎年11月頃に約5000羽のウミネコが飛来し、3月頃に島に住み着き産卵。7月頃、育ったひなとともに北へ飛び立つ。国内有数のウミネコの営巣地として、国の天然記念物に指定されている。
経島の対岸で撮影をしていると、「波が高い日にウミネコさんが飛んでくれるなんて運がいいねえ」と日御碕で土産物屋を営む蒲生晴夫さん(66)に声をかけられた。
営巣を始めるまで沖合をねぐらにしているため、「2週間、姿を見かけなかったこともあったよ。全てはウミネコさんの気分次第」と蒲生さんは笑う。
地元漁師にとってウミネコは昔から大切な存在。漁師の斎藤友義さんは(69)は、「ウミネコの〝たかり〟に向かって船を出す。その下には魚がいるからね。魚群探知機を積むようになっても変わらないよ」と教えてくれた。
古くから続く人とウミネコの良好な関係が、大迫力の光景を生み出している。 (写真報道局 古厩正樹)
荒波縫うウミネコの群れ 島根県出雲市の経島
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