古くは村上水軍の根城、戦前は帝国海軍の基地、現在は海上自衛隊呉地方総監部のある広島県呉市。JR呉線と桧垣川、市道幸町1号線に囲まれた三角地帯の石垣いっぱいにV字型の建物がそびえる。
船の舳先のような木造2階建ての施設は「呉YWCA」。昨年6月に〝ぱつぱつ系〟として「なかなか遺産」第3号に認定された。
この建物、謎が多い。
昭和17年頃の竣工とされるが、終戦前の資料がなく詳細不明。将校たちの親睦施設という説もあるが、重厚感のない簡素な壁など疑問も多い。旧海軍の倉庫として使われていたというがこれも推測。
戦後は、占領軍とともに来日したYWCAに使用され、26年に「呉YWCA」となった。
諸説入り乱れるが建築物として魅力的。その中でも目を引くデザインが建物北側、V字の頂点部分にある階段だ。1階から続く踊り場で、1本の階段が左右の壁に沿って2本に分かれて2階へ向かう。「倉庫ならあんなに凝った意匠にしないでしょう」と呉YWCAの業務執行理事で建築士の家頭昌子さんは話す。
その時々で、少しずつ改装されてきたせいか、ドアなどの建具は統一性がなく違和感を覚える。見るほどに疑問と想像が膨らんでいく建物だ。
「呉YWCA」となってからは、カルチャー教室などで活用され、にぎわいをみせたが近年は建物の老朽化とともに利用者も減っていたという。
そんな時期のなかなか遺産認定で、再び脚光を浴びることに。見物客も増え、会員以外の人たちと連携する機会も多くなった。年2回のバザーは、しゃれたマルシェに進化しつつ、さらに人を呼ぶように。
「なかなか遺産は起爆剤。みんなに笑顔が増えて前向きになりました」と家頭さん。人の流れが刺激をもたらす。建物とともに、そこでの活動もまた、時代に合わせた変化を続ける。
なかなか遺産 呉YWCA
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