水郷地帯の広い空を夕焼けが燃やすように染めていく。静かに波立つ水面がきらめきながら、コンクリートの防波堤に打ち寄せる。車輪がレールをこする音が聞こえ、はるかに連なる橋脚の上に電車が姿を現した。
茨城県南東部の北浦に架かる「北浦橋梁(きょうりょう)」はJR鹿島線の延方駅(潮来市)と鹿島神宮駅(鹿嶋市)の間にある1236メートルの鉄道橋だ。
鹿島線が開通したのは、旧国鉄時代の昭和45年。大阪万博が開かれ、「黒ネコのタンゴ」がヒットした高度経済成長期の最中だった。水郷地帯をまたぐように、海側の鹿島サッカースタジアム駅と東京方面は香取駅(千葉県香取市)の17.4キロをほぼ全線高架でつないでいる。
鉄道開通は鹿島臨海工業地帯の開発と連動したものだった。工業地帯と千葉、東京方面の間を生産品や原料を輸送する役割を担っている。住民にとっては、海と川、湖に囲まれ“陸の孤島”とも呼ばれた一帯での鉄道開通は悲願の成就だった。
潮来市でホテルを営む芝田貢さん(66)は「学生生活を送っていた東京からの帰省が、バスから電車に替わったのが印象的だった」と経験を語る。「鹿島の開発とともに、鉄道の開通は地域の変化と成長を象徴するできごとだった。当時はにわかに周りが上ずっていた」と振り返る。
電車が走り去ると、辺りに静寂が戻り、太陽がゆっくりと橋の下へ落ちていった。
JR各社は4月、分割民営化して30年を迎えた。北浦橋梁は、今も変わらぬ姿でたたずんでいる。 (写真報道局 松本健吾)
view 夕映えの水面をひとまたぎ JR鹿島線・北浦橋梁
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