柵もないベンチと屋根だけのホーム。目の前には波もない穏やかな瀬戸内海が広がる。夕日が沈み、海は次第に赤く染まっていく。
香川県高松市から愛媛県宇和島市までの約300キロを海岸線に沿うようにJR予讃線が結ぶ。
美しい景色が続く沿線のなかでも海に近い下灘駅(愛媛県伊予市)は映画、ドラマの舞台として度々登場してきた。素朴なホームが懐かしさを感じる駅に多くの観光客が訪れている。平成28年度の同駅の利用客は1日平均で35人だが、それ以上に車やバイクで訪れる人も多くいるという。
「人がいなくて静かすぎるよりもにぎやかな方がいいかな」と話すのは駅前で美容室を営む稲本早苗さん(70)。
稲本さんが子供の頃、駅前で雑貨店と食堂を営んでいた母・ヤエ子さんは駅員がホームで釣り上げた魚をさばき食事を提供していたという。現在は無人駅だが、「当時6人ぐらいの駅員さんがいて、松山に向かう学生たちでホームはにぎわっていた」と稲本さん。下灘駅の原風景の記憶は今も鮮明に残っている。
今年で運行3周年を迎えた観光列車「伊予灘ものがたり」が下灘駅で熱烈な歓迎を受けていた。
無人駅でもきれいに清掃された駅舎と周囲を彩る季節の花々。地元住民に支えられ、愛されている駅の姿があった。
「思わず降りてしまう、という経験をしたことがありますか。」
青春18きっぷのポスターで下灘駅の写真につけられたキャッチコピー。まさにそんな気持ちにさせてくれる海と夕日が似合う小さな駅だった。 (写真報道局 大西正純)
view ホームに重なる水平線 愛媛県伊予市の予讃線・下灘駅
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