曲がりくねった道が港から島へ続く。逆光をあびてシルエットが浮かび上がった。モノトーンの景色に航跡と打ちつける波だけが輝いていた。
瀬戸内の穏やかな海に面し、潮の分かれ目で多くの船が「潮待ち」を行っていた「鞆の浦」(広島県福山市)の平港から目と鼻の先に浮かぶ玉津島。小さな無人島へ続く道は防波堤だ。地元ではねずみが寝ている姿に似ていることから「ねずみ島」とも呼ばれている。
「子供の頃、すでに防波堤は島の近くまであった」と話すのは、鞆の浦で生まれ育った矢野幾久男さん(79)。波の影響を受けやすい理由で、防波堤を島まで延ばし陸続きにしたという。
島に渡ると木々が生い茂るなか道が続く。島の中心には神功皇后を祭った社殿がひっそりとたたずんでいた。かつては周辺の住民らが船で参拝に訪れていたといい、石段の参道や鳥居などが今も残る。
鞆の浦を含む瀬戸内は昭和9年、雲仙、霧島とともに最初の国立公園の指定を受けた。細い道も昔と変わらず、街全体の景観もそのままに。風情のある街はハリウッド映画やドラマなどのロケ地としても人気が高く、今では外国人観光客も多く訪れるようになった。
一方、度重なる台風の影響と住民の高齢化などで、玉津島に立ち寄る人は減少した。島へと続く平港も、エビやハモの漁が盛んだった頃は、小さな港に100隻を超える漁船が停泊していたという。しかし、後継者不足で漁師が減り、漁船の数もわずかになってしまった。
「昔は祭礼で島に集まり会食をしたり、夕方には灯籠流しもあった」と矢野さん。その祭りも今では平港側の街で行われるようになった。
来月行われる年に1度の祭礼は地域住民たちが集う貴重な機会となる。 (写真報道局 大西正純)
view 防波堤が繋ぐ絆 広島県福山市「玉津島」
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