東日本大震災の被災地に思いをはせるため、京都の大学生らが毎月11日、東北の食材を使った料理を提供する酒場「きっかけ食堂」が全国に広がっている。約5年前に始めた学生らは卒業し、就職した東京で開店。名古屋でも賛同者が後に続き、京都では3代目メンバーが引き継ぐ。震災から8年となる11日には被災地・仙台にもオープンする。
3代目引き継ぐ
京都市上京区の貸店舗で毎月11日夜、のれんをあげる「きっかけ食堂」。2月11日、2代目メンバーから3代目メンバーへの引き継ぎが発表された。
食堂は平成26年5月、京都からの震災ボランティアツアーを企画運営していた原田奈実さん(24)が、当時通っていた立命館大の同級生らと3人で始めた。食材は東北の生産者から仕入れた新鮮な魚介類や特産品、地酒など。食を通じて東北の被災地や復興を考える「きっかけ」をつくりたいと思った。30年2月には継続的な活動が認められ、復興庁から表彰された。
3代目メンバーの会社員、武田彩(あや)さん(23)は震災ボランティアを通じて原田さんと親交があった。「3月11日が近づき、当時の映像やニュースがよく流れている。過去のことばかりではなく、今ある東北の魅力を伝えるようなつながりに変えていきたい」と決意を新たにする。
卒業後に東京出店
初代メンバーの原田さんは29年3月の大学卒業後、東京で就職し、活動から距離を置いていた。しかし30年3月、海産物を仕入れ、料理法やさばき方などのアドバイスを受けていた宮城県気仙沼市の「丸功(まるこう)魚屋」が廃業することを知った。得意客の転居や大型スーパー開店のあおりを受けたためだった。
「遠くからでも何かできることがあったのではないか」。そんな思いが募り、翌4月から東京都渋谷区で食堂を始めていた。
賛同する仲間が増え、8月には名古屋市千種区にも食堂ができた。今年2月には全国の常連客ら17人が参加し、宮城県女川町(おながわちょう)と石巻市をめぐるツアーを開催。復興に向けて取り組む人たちから話を聞いた。食堂を訪れたことがきっかけでツアーに参加した埼玉県狭山市の学生、鈴木みなみさん(21)は「これまではひとごとだったが、実際に現地で体験談を聞き、自分ができる範囲で復興に関わっていきたいと思った」と話した。
被災地からエール
3代目メンバーの武田さんは2月末、2代目メンバーで京都女子大4年の奥田晴香さん(22)や東京、名古屋のメンバーとともに東北の生産者を訪れ、食材を調達した。
気仙沼市の「すがとよ酒店」では、震災で夫と義父母を亡くしながら、店を再建した菅原文子さん(69)を訪ねた。菅原さんは「若い人たちが私たちの思いを自分の言葉で伝えてくれることで、新たなつながりが生まれてくることがすごい」とエールを送った。
卒業する奥田さんは「先輩や仲間たちに支えられてきた。就職しても関わっていきたい」。後を継ぐ武田さんも「東北を応援するため毎月来店する人も多い。この場はなくしてはいけないという責任感でいっぱい」と意気込む。
11日には仙台市青葉区に地元NPOが立ち上げた食堂がオープンする。京都の学生らが始めた支援の輪は少しずつだが、確実に広がっている。
京都発のきっかけ食堂、被災地・仙台に 毎月11日、東北食材で料理提供
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