2022年4月、北海道知床沖で遊覧船が沈没し、乗客乗員26人が死亡・行方不明となった事故で12日、運航会社社長の初公判が開かれました。弁護側は無罪を主張しましたが、被害者家族は「そんな主張が通るわけない」と怒りをにじませました。
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■“ずさんな安全管理”沈没事故から3年7か月
沈没事故から3年7か月。
息子ら2人が行方不明
「桂田側の主張を聞いていて、本当にふざけんなと何度も叫びたくなりました」
家族が怒りの声を向けたのは、業務上過失致死の罪に問われている「知床遊覧船」の社長・桂田精一被告。12日、初公判が行われました。
2022年4月、知床沖で発生した遊覧船「KAZU 1」が沈没した事故。船は水深100メートルを超える海の底で発見されましたが、20人が犠牲となり、いまだ6人が行方不明のままです。
起訴状によりますと、桂田被告は運航管理者としての注意義務を怠り、知床沖で遊覧船を沈没させ、乗客乗員26人を死亡させたとされています。
知床遊覧船・社長 桂田精一被告
「この度はお騒がせしまして、大変申し訳ございませんでした」
事故後の会見では土下座を見せた桂田被告。次第に明らかになったのは、“ずさんな安全管理”です。
知床遊覧船・社長 桂田精一被告
「海が荒れるようであれば引き返すという条件付き運航ということを船長と打ち合わせ、当時の出航を決定しました」
事故当日は荒れた天候が予想され、出航前から「強風・波浪注意報」が出されていた現場海域。他の船の船長が止めたにもかかわらず「KAZU 1」は出航しました。
さらに、国の運輸安全委員会は、船の甲板にあったハッチのふたに不具合があり浸水が拡大したと指摘。会社の安全管理体制の欠如が事故の一因だと結論づけていました。
■冒頭謝罪…終盤に“貧乏揺すり”「この人間は…いらだつもの感じました」
事故で行方不明となっている小柳宝大さんの父親も、初公判を傍聴するために北海道に降り立ちました。「KAZU 1」の船内から見つかった宝大さんのダウンジャケットをその身につけていました。
小柳宝大さんの父親
「一緒に来たかったから、あした裁判所には宝大のスーツ・ワイシャツ、下着から靴下から革靴まで全部、宝大のものを着ていきます」
被害者の家族が傍聴するなか迎えた初公判。冒頭、桂田被告が口にしたのは謝罪の言葉でした。
桂田被告
「この度の事故で亡くなられた方に心からご冥福を申し上げます。また、ご家族の方に深くおわびを申し上げる」
「罪が成立するのか私には分かりません。経営者として事故を防げなかったことを重く受け止める」
裁判の最大の争点は「事故を予測できたかどうか」についてです。
検察側は、桂田被告が“事故を予測できたにもかかわらず、出航中止の指示をしなかった”と主張しました。
検察側
「運航基準を上回る風速や高波が予報されていて、乗客乗員を死傷させる事故を発生させる恐れがあった。船長に出航を中止するよう指示せず事故が発生した」
一方、弁護側は“事故を予測することはできなかった”と無罪を主張しました。
弁護側
「船長から『荒れる前に引き返す』旨の判断を伝えられた。船長が、桂田被告に情報提供や助言を求めることなく、独自の判断で航路を変更した」
冒頭で謝罪の言葉を述べた桂田被告。裁判の終盤、検察側の証拠調べの際には貧乏揺すりをしたり椅子に深く座っていたりしていたといいます。ただ、弁護側の証拠調べになった途端、椅子を座り直して姿勢を正したといいます。
小柳宝大さんのスーツで裁判を傍聴した父親は「いやぁ…この人間はなかなか、いらだつものを感じましたね。ちゃんとした法の裁きを決定をしていただきたい」と話しました。
別の家族も…
息子ら2人が行方不明
「まったく桂田は反省していないと思いました。すべての責任を船長に押しつけて『自分は何も悪くない』と。そんな主張が通るわけない。聞いていて怒りがこみ上げてきました」
「これだけ多くの犠牲者が出ているのに、よくのうのうと無罪を主張できるなと思って。本当に許せない気持ち」
■今後のポイント“ほかの船がどこまで予測できていたか”
家族が怒りをにじませる今回の裁判。今後のポイントについて専門家に聞きました。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「直接運航を管理する立場の被告は、事故を予防する義務を負う二次的な責任者としての主体になりうる」
こう指摘した上で、“ほかの船が事故の可能性をどこまで予測できていたか”の証言が重要だと話します。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「(他の船長が)みんな(海が)荒れてくるから、事故が起こるかもしれない。『危ない』とみんな思っていたと」
「被告だけが予測してないか、予測を無視したか、もしくは予測しようとしなかったか。いずれにしても注意義務違反を問われうると。その上で被告の認識がどうだったか。信用できるような弁解をするかがポイント」
■判決は来年6月17日に…争点を整理
改めて、今後の裁判の争点について整理します。
12日の初公判で桂田被告は家族に向けて謝罪した上で、「罪が成立するかは私には分かりません」と話し、弁護側は無罪を主張しています。
今回の裁判で最大の争点となっているのは「事故を予測できたかどうか」です。
検察側は、事故当日、運航基準を上回る風速や高波が予報されていたとし、乗客乗員の死傷事故が発生する恐れを認識できれば、事故の予見可能性は認められる、つまり、事故を予測できたと主張。
さらに、桂田被告はこれらを予見できたにもかかわらず、船長に出航中止などの指示をしなかったため事故が発生したと述べました。
ほかにも、定点連絡に用いられる無線機のアンテナの故障を把握していたことなども指摘しました。
一方で、弁護側は船長から、荒れる前に引き返すという旨を伝えられたとしていて、桂田被告に情報提供や助言などを求めることはなく船長が独自の判断で航路を変更したと主張しました。
また、沈没の原因とされている船の甲板にあるハッチの不具合については、事故の3日前の検査で合格と判定されていたため、事故の発生を予測できなかったと説明しています。
裁判では出航判断や運航管理など、桂田被告の責任の有無について争われることになり、判決は来年6月17日に言い渡される予定です。
(2025年11月12日放送「news zero」より)
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【遊覧船沈没事故】裁判ポイント「ほかの船は予測できたか」 無罪主張「通るわけない」被害者家族は怒り
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